2019 Fiscal Year Research-status Report
プロジェクトを用いたCLILによる領域統合型英語活動の効果
Project/Area Number |
18K00838
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
村野井 仁 東北学院大学, 文学部, 教授 (20275598)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 内容言語統合型学習 / 異文化間能力 / 文法力 / 第二言語指導効果研究 / 英語指導法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は前年度末にデータ収集を行った予備的調査の分析結果をまとめ、「CLIL的要素を持った領域統合型の英語授業と異文化間能力」と題した研究発表をJ-CLIL東北大会(2019年6月15日 東北大学)にて行った。これは、日本人大学生32名を実験参加者とし、事前・事後テスト法を用いて行った指導効果研究である。5領域における技能を伸ばすことをめざしたCLIL活動を連続的に行いながら、コンテントである難民問題に関する理解・考えを深めることをねらいとした短期間(60分×2回)の統合的言語活動が異文化能力に正の効果をもたらすかどうかを検証した。異文化間能力は3つの要素(知識:難民問題についての知識、姿勢:難民問題についての興味・関心、技能:難民問題に関する語彙力及び仮定法に関する文法力)から測定した。分析結果からCLILの理念に基づく領域統合型の英語授業は、日本で英語を学ぶ大学生の異文化能力(知識・姿勢・技能)を少なくとも短期的に向上させることが明らかになった。 2019年度には上記の予備的研究結果に基づき、プロジェクト型CLIL活動の効果を調査する実験を行った。実験参加者は約30名の大学生で事前・事後テスト法による指導効果研究である。ノーベル平和賞を与えたい人物を選びその人物に関する紹介プレゼンを行うというプロジェクト活動を目標言語を用いながら体系的に行うことによって異文化能力(知識、姿勢、技能)に変化がみられるかを検証した。技能に関しては口頭での表現能力、文法運用能力も評価対象としている。学習者を社会的存在としてとらえ、言語使用における主体性を重視することによって総合的な異文化能力の伸長をねらった社会文化理論に基づくCLIL活動である。現在、データ分析を行っており、結果がまとまり次第発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である2018年度から2年にわたり、各年度ごとに実証的な準実験を実施してきているため概ね順調に進んでいる。 本研究の核心をなす課題の一つに第二言語習得理論への認知的アプローチと社会文化的アプローチの融合があるが、この2年間に行った実験においては認知的プロセスを促す言語活動を社会文化的なコンテクストの中で展開することに成功しており、大きな進展があったと考えている。 異文化間能力の測定に関しては当初、問題解決能力を測る業者テストの利用を計画していたが、その内容と本研究テーマの間にずれがあることが確認されたため、独自に測定テストを開発することになった。この点は計画からずれてはいるが、研究遂行の上では結果的にテスト開発につながったためプラスの結果が得られたと考えることができる。 効果検証のために行った実験のデータ分析に時間がかかっており若干の遅れはあるものの概ね予定通り研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はこれまでに行った実証的研究の結果をまとめるところに主眼が置かれる。口頭での文法運用能力を測定しているためその分析のために膨大な時間と労力かかかっている。この2年間は謝金を払って補助者にデータ分析に協力してもらうことができなかったため、2020年度には計画通り分析を進めていきたい。 これまでの研究成果に関する口頭発表は勤務先所在市内で行ったため、旅費も使わずにすんでいる。可能であればCLILが最も活発に行われているヨーロッパでの研究発表又は資料収集を実施したいところであるが現状ではコロナ感染のため困難な模様である。インターネットを活用して成果発表及び情報交換の方法を探っていく予定である。 第二言語習得への認知的アプローチと社会文化的アプローチの融合はいまだ試みている研究者がいないため、この点に関する理論的研究の紹介と実証的研究から得られる示唆及び英語指導上の実践的知見を加えた単行本の執筆も2020年度から進めていく予定である。
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