2018 Fiscal Year Research-status Report
第二言語習得における思考パターンの習得順序について―移動表現を用いた考察
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18K00845
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鈴木 ひろみ 中央大学, 商学部, 准教授 (90781112)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移動表現 / 思考パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
Slobin(1987)などは“Thinking for Speaking”「発話のための思考」の観点から、英語、スペイン語など言語間での対照比較を行った結果、事象のどの部分に注目して表現するかは言語毎に違いがあることを論じた。そこで本研究は、この「発話のための思考」の差異に着目し、第二言語習得の観点から思考パターンは学習者にとって習得可能であるのか、もし習得可能であれば、「自然習得順序仮説」の理論に焦点を当て、学習期間との関連性はあるのか、習得の順序はあるのか、を検証することにより、認知的アプローチからの第二言語習得の理論構築を目指すことを目的とする。また、本研究の成果から、第二外国語教育へ応用するための示唆を得る事が可能となると考える。 具体的には、まず先行研究で指摘された日本語と中国語の移動表現に現れる思考パターンの差異、たとえば、A)中国語を母語とする人は、ある情景を描写する際に、言語化の焦点である物体がなぜその空間に存在しているのかを描写するが、日本語ではそれを省略する傾向にあること、B)フレームの一部を背景化する際、日本語は中国語よりも起点部を顕著にすることを重視する、といった「発話のための思考」を再論考する。つぎに、日本語を母語とする中国語学習者は語学学習の過程において中国人の思考パターンを習得可能であるのか、習得可能であれば、その時期および学習の順序について調査データを用いて分析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた内容、①日本語と中国語の移動表現において、思考パターンの差異に着目した文献などの収集および検証、②調査データの収集(日本語を母語とする中国語学習者に対して、習熟度別に調査データを収集する予定だったが、学習期間別に調査データを収集することに変更した)といった作業を行ったことにより、分析に必要なデータは揃いつつあるため、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、移動表現に関連する文献などの収集および検証を継続するとともに、回収されたデータの分析を行う予定である。具体的には①思考パターンは習得可能であるのか、②習得可能であれば「自然習得順序」は存在するのか、についての考察を進める。また、国内外にて積極的に研究成果の発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
資料収集および学会参加のため、中国に渡航する必要がある。また、アンケートの協力者に一人ずつ謝礼として図書カードを渡す予定がある。そのほか、研究に必要な専門書や最低限の文房具などの購入が必要である。
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