2019 Fiscal Year Research-status Report
第二言語習得における思考パターンの習得順序について―移動表現を用いた考察
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18K00845
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
鈴木 ひろみ 中央大学, 商学部, 准教授 (90781112)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 移動表現 / 事態把握 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は前年度収集したデータ(中国語・日本語の母語話者に対して“Frog,Where Are You?”という文字のない絵本に関して、「絵から自由な発想で物語を作ってください」と指示し、それぞれの母語による作文をしてもらったもの)をもとに移動表現に現れる「発話のための思考」の先行研究を再論考した。その上で、「場面外視点」と「場面内視点」のアングルから中国語と日本語の移動表現に現れる相違点について考察した。その結果、「場面外視点」で事態把握する中国語は、「場面内視点」で事態把握する日本語に比べ、視点の転換が比較的自由であることがわかった。そして、同じ状況を描写する際に、中国語の方は受動文で表現されるのに対して、日本語は能動文で表現される傾向があることを指摘した。さらに、絵本の登場人物の心理的場面を言語化する際に、中国語は「自己投入」という視点構図で言語化するのに対して、日本語は「共感体験」の視点構図で言語化するという営みを行っている傾向があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年は予定通り、初年度で得られた紙媒体調査紙の詳細な分析を行うことにより、「発話のための思考」の先行研究を検証することができた。中国西安で開催した《漢日対比語言学研討会》にて《漢日空間位移事件途径顕性化対比研究》をテーマに発表を行った。さらに、先行研究を踏まえた上で、収集したデータを分析することにより、絵本の登場人物の心理的場面を言語化する際に、中国語は「自己投入」という視点構図で言語化するのに対して、日本語は「共感体験」の視点構図で言語化するといったことを明らかにした。こちらは論文の形で成果発表する予定であり、現在はその準備が進んでいる。そして、第二言語習得の観点からの分析もある程度進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年度に当たる三年目は、継続的に文献・資料・データの収集および検証を行う。まとめた研究成果は国内外の雑誌への論文投稿および学会での研究発表を行う予定です。
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Causes of Carryover |
研究成果の発表のための旅費に適宜使用していく予定である。そのほか、研究に必要な専門書および文房具などの購入の予定がある。
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