2020 Fiscal Year Research-status Report
日本人英語教師のクラスルーム・インタラクティブ・コンピテンス育成の為の談話研究
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18K00859
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Research Institution | Fukuoka Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
細川 博文 福岡女学院大学, 国際キャリア学部, 教授 (10249625)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | インタラクション / 教室談話 / 英語指導法 / 教員養成におけるCIC育成 / 教員養成における振り返り指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは「日本人英語教師のクラスルーム・インタラクティブ・コンピテンス育成の為の談話研究」である。学習指導要領では英語を使って授業を行うことが求められているが、実態としてはコミュニカティブな指導法が浸透しているとはいえない。これには複数の原因が考えられるが、教室内で教師と学習者、また、学習者間でどのようにしたらインタラクションを起こすことができるのか、という根本問題が解決されていない点が最も深刻である。この点については、第二言語学習者の教室談話に焦点をあてた研究が Walsh(2006, 2011, 2013)を中心に進められ、最近はその知見を基に教師育成の研究(Mann & Walsh, 2017)が行われている。本研究はこうした研究を基に、日本人英語教師が学校での授業のなかで、いかに教室談話を活かして学習者の英語力を高めるか、また、教師の成長過程の一環として授業の振り返りを通してどのように教師の教室談話能力を向上させることができるかという点について研究を行っている。初年度(2018年・平成30年)は教室での英語指導に関するアンケート調査を行い、指導法の現状を把握した。2年目(2019年・令和元年)は実際に教室現場に入り、授業をビデオ撮影して教室でのインタラクション・データを収集した。そして3年目(2020年・令和2年)は収集したデータを分析して、教室談話(つまりコミュニケーション)の実態および教室談話を通した教師の英語育成能力向上のための具体的方策をまとめる予定であった。しかし、2年目末から新型コロナウイルスの感染が拡大し、度々緊急事態宣言が発出されるなど、計画通りに研究データを収集できない事態が生じた。そこで今年度は、大学生の教職履修者の授業を分析し、振り返り学習の繰り返しを通していかに指導内容の質が向上するかについて研究し、その成果を紀要論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
理由 研究テーマである「日本人英語教師のクラスルーム・インタラクティブ・コンピテンス育成の為の談話研究」を進めるためには、現場(中学・高等学校)に入って実際に授業の音声・画像データを収集しなければならない。しかし、2020(令和2)年度はそうすることが全くできなかった。2019(令和元)年度に若干データを収集したが、それでは不十分であったため、2020(令和2)年度後半から現場に入ってデータを追加収集する予定であった。しかし、新型コロナウイルスの感染収束の目処が立たず、また、現場ではマスクを着用してコミュニケーションを中心とする授業が制限されていたため、データ収集の手立てを失った。窮余の一策として、自分が教える教職課程の大学生の指導案研究を行った。ただし、授業はオンライン双方向授業であったため、実際に模擬授業を実施することができなかった。そのため、学生が作成した指導案をチャットを通した授業で分析させ、振り返りを繰り返し行わせることで指導案の内容がいかに改善するかを研究した。その結果、オンライン授業での指導案分析だけでも授業内容(指導案の質)が改善することが分かった。本研究成果は紀要論文としてまとめた。今後オンライン授業も並行して実施される時代となることも視野に入れると、本研究の成果は英語教育指導員育成の一方法論として位置づけできるものと考える。その他には、2019(令和元)年度までの研究成果が学会(大学英語教育学会第59回国際大会、および、大学英語教育学会九州・沖縄支部第32回支部研究大会)で受理され、研究発表する予定であったが、両学会とも新型コロナウイルスの感染拡大のため中止となり発表の場を失った。ただ、2021(令和3)年度の大会で再度受理されたため、オンライン開催になるが研究成果を発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は申請段階の計画では2020(令和2)年度末で終了予定であった。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大をうけデータ収集等が大幅に遅れたため1年間の延長申請を行い受理された。上記進捗状況にも記したが、2021(令和3)年度は既に2つの学会(大学英語教育学会第60回国際大会、および大学英語教育学会九州・沖縄支部第32回支部研究大会)でこれまでの研究成果発表が受理されているため、両学会にて発表を行いこの分野に関心を持つ研究者・現場教師と成果を共有したい。また、中学・高等学校教室現場でのデータ収集は感染収束の兆しが見えず今後も大幅な追加データの収集が期待できないため、これまでに収集したデータを詳細に分析するとともに、教職課程で学ぶ大学生の指導案作成および模擬授業データなども加えて、教室談話の重要性、談話コントロール能力の育成、およびそうした能力を育てるための振り返り実践の重要性について研究をすすめ、最終成果をまとめたい。その際、この分野で目覚ましい成果を上げてきたWalsh(2006, 2011, 2013, 2017)、および EMI(English Medium Instruction)の研究で著名なMacaro(2018)の研究を参考にしながら、研究成果を現場で教育にあたる教師に対して実効性のあるものにまとめたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020(令和2)年度は新型コロナウイルス感染拡大のため研究が大幅に制限された。1年延長した2021(令和3)年度は研究の最終年度であり、これまでの研究成果をまとめ冊子にして広く公表する予定である。
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Research Products
(1 results)