2020 Fiscal Year Research-status Report
Developing Effective Approaches to Acquire Vocabulary on the Basis of Analytical Research on Vocabulary Competence to Promote Reading Comprehension
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18K00883
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Research Institution | Tsuda University |
Principal Investigator |
田近 裕子 津田塾大学, 総合政策研究所, 研究員 (80188268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊嶋 朗子 都留文科大学, その他部局等, 准教授 (20527717)
奥脇 奈津美 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (60363884)
野田 小枝子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (60408474)
星野 徳子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (70609841)
齊藤 涼子 白百合女子大学, 文学部, 教授 (90758509)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | vocabulary / reading comprehension / task / ICT / pedagogy |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の主な実績は、主に2点である。第一点は、多読テクスト読解過程における未知語の推論について英語学習者からの英語教育的観点からのコメントを得たこと、および文脈の中で学習者の出会う未知語の処理について、英語教育的観点からどのようにしたら効果的に学べるかのアドバイスを得たことである。第二の点は、読解と語彙の先進的研究成果から得た知見により、黙読によるテクスト読解の過程で、音声インプットがあることが読解力と語彙力を培う可能性が高いことについて研究を進めることができたことである。 第一点の多読テクスト読解過程における未知語の処理においては、比較的語彙力のある読み手は特に辞書による意味確認を求めず読み進められるが、既知語の少ない読み手は語彙レベルの低いテクストの読解においても辞書による意味理解を求めるという傾向がみられた。語彙レベルによって推論の力に違いがあると考えられるので、辞書活用指導および推論のストラテジーの指導が必要と思われる。 また、第二点の音声とテクストのスクリプトを合致させることが読解力向上に寄与する点では、ごく最近の多くの研究成果について知見を得た。この傾向から考えられるのは、黙読と言語の音声入力について、特に Baddeley の working memory に関する研究で提唱されている phonological loop に関する研究を振り返り、言語習得の基本である音声とテクスト読解、特に多読の場合に、phonological loop がどのように働くかを探求する必要があることが分かった。そのうえで、近年、デジタル化のおかげで広まっているコンピュータを用いた音声インプットを英語学習、とりわけテクスト読解に活用する可能性を追求できると良い。 これらの点は、次の展開として、英語テクスト読解および語彙指導の実践的方法論へと進む基盤となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はコロナの影響で研究の進捗が左右されることが多々あったが、最近では、コロナ禍へもそれなりに対応できるようになった。学生からのデータ収集や実践的語彙指導などは、リモートでも可能なことが分かり、リモートによるデータ収集や読解タスクの試みなどを導入することにより、新たな視点から、研究に寄与する材料が得られることも分かってきた。したがって、今まで遅延していた研究領域を今後は埋めていけると考えている。 ただし、予定していた学会発表がコロナの影響でさらに次年度に延期になったりしたことから、研究内容の発表や発表に伴う他の研究者からフィードバックを得る点などでは、必ずしも予定通りの進捗状況とは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度および今後、主に実践したいことは3点ある。第一点は、オンラインおよび実際に書籍を用いて、多読の際に top-down としての推論のストラテジーと bottom-up としての辞書等による意味の明示的学習とをどのように組み合わせると読み手にとって、読解力と語彙力の育成につながる指導ができるかを実践的に明らかにしていく。特に推論のストラテジーを実践的に開発できればと考えている。これは、L1 での語彙指導に関する R. J. Sternberg (1987) および他の主たる研究者による、L1の語彙のほとんどは文脈からの推論で学ばれるとする主張から着想を得ている。 二番目の研究の方向性は、phonological loop 研究を黙読に導入することである。特に、英語学習の初期の段階で音韻インプットとテクストのスクリプトとを関連付けることはその後の言語発達に大きな影響を及ぼすと考えられる。すなわち、多読など黙読をしている時に音声はどう関わっているかという問題である。また、語彙習得の観点からも音韻がどう語彙習得に関わるかについては、一般的な言語発達、言語習得を考える場合でも本質的な問題となると考えられる。 第三点は、上記の2点を統合して、英語教育における語彙習得および読解力向上のためのプログラムを作成することである。総合的な英語習得における問題として、学習初期における、語彙と音声の関係が考えられる。母語では何万語も推論で身につき、その力で読解力も培われ、その読解力が語彙習得推進を促すメカニズムが L1 の習得ではあるが、外国語あるいは第二言語として新たな言語を身につけようとする際には、この循環が容易に働かないと考えられる。日本の英語教育を向上させるためには、これらの点のついて大きく改善を試みる必要があり、この点を集中的に教育実践に応用していくことで大きな成果が期待できる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、学生からデータを得ること、ワークショップを実開催すること、および国際学会への出張などの経費が未使用となったため。
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Research Products
(2 results)