2019 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語学習者の発話の非流暢性を発話の協働構築の観点から再検討する
Project/Area Number |
18K00889
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
星井 牧子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90339656)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 外国語教育 / ドイツ語教育 / 第二言語習得 / 学習者言語 / インタラクション / コミュニケーションストラテジー |
Outline of Annual Research Achievements |
言いなおしや言いよどみなどの「非流暢性」を示すとされる言語現象は、従来、学習者の発話産出プロセスにおいて流暢性を下げる要因として扱われてきている。本研究では、非流暢性を示す現象を、学習者個人の発話プロセスの中での機能に加え、他者とのやりとりにおける機能面も含めて考察し、発話の協働構築の観点から捉え直すことを目指している。 令和元年度は、主に学習者個人の発話プロセスの中での機能に焦点を当てて考察した。インタビュー場面の学習者の発話における自己開始・自己訂正シークエンスのうち、特に定動詞第2位のXVS構造を実現する際の非流暢性を動詞の前域(Vorfeld)との関係から考察した。分析には、平成26年度~29年度科研費(基盤C)採択課題で収集し、文字化した、日本語を母語とする大学生2名のインタビューデータを用いた。 分析の結果から、ポーズやフィラー、繰り返しなどの「非流暢性」を示す現象は、VSの前後に頻繁に見られ、学習者はドイツ語に特徴的なXVS構造の実現のために高い注意を向けていることが明らかになった。その一方、先行研究ではXVS構造よりも習得が遅いとされている定動詞後置のV-END構造においては、非流暢性を示すポーズやフィラー、繰り返しは少なく、定動詞後置文がよどみなく発話されている例も多く観察された。XVS構造において特定のX要素が発話の非流暢性を高めるかについては、今後さらに分析を続ける必要がある。また、こうした非流暢性を示す現象が他者とのやりとりの中でどのような機能を果たすかについては、今後、複数話者間の会話データにおいて分析をすすめる予定である。 研究の途中経過は、日本独文学会春季研究発表会(2019年6月、学習院大学)およびアジアゲルマニスト会議2019(8月、北海道大学)で報告した上で、論文にまとめ、アジアゲルマニスト会議の記録論集に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インタビューデータにみられる非流暢性を表す現象の分析は実施できたが、他者とのやりとりにおける機能についての分析、考察が遅れている。他者とのやりとりにおける機能については、2020年2月・3月に分析を進め、2020年3月にFaDaF2020(ドイツ、マールブルク大学)での途中成果の研究発表を予定していたが(採択済み)、新型コロナウィルス感染拡大の影響によりデータ分析に十分な時間をとることができず、またドイツ国内も大学封鎖となったことから、海外(ドイツ)の共同研究者との研究打ち合わせも制約をうけた。さらに海外渡航を伴うFaDaF2020への学会出張を見合わせたことで(後に学会自体も中止)、予定していた成果発信もできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の事情で遅れた分のデータ分析を進め、研究成果の発信準備につとめる。2020年度は、国際ゲルマニスト会議2020(IVG2020)(2020年7月、パレルモ大学・イタリア)およびFaDaF2021(2021年3月、カッセル大学・ドイツ)に参加し、研究発表を行う予定だったが、IVG2020については新型コロナウィルスの感染拡大によりすでに延期が決定している。FaDaF 2021についても、今後の感染状況を踏まえて参加の可否を慎重に検討せざるを得ないことから、オンラインで実施される学会等を含め、研究成果の発信方法を検討していく。
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Causes of Carryover |
理由:前述の理由で当初の計画を大幅に変更せざるを得ず、データの転記および分析に遅れが生じた他、成果発表のための学会参加と海外の共同研究者との打ち合わせを目的としてドイツへの渡航を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い出張を中止したことで、令和元年度中の支出総額が減り、結果的に次年度使用額が生じた。 使用計画:複数話者間での会話における非流ちょう性の分析作業を進めるために、あらたに複数話者間の会話データの転記作業を行い、研究補助者への謝金として支出する。また2020年度はIVG2020、FaDaF2021を始めとする複数の国際学会への参加を予定し、そのための研究打ち合わせを含め、渡航費として支出する予定でいたが、学会参加・海外渡航の可否については新型コロナウィルスの感染状況をみながら検討する。
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