2020 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ語学習者の発話の非流暢性を発話の協働構築の観点から再検討する
Project/Area Number |
18K00889
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
星井 牧子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90339656)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 外国語教育 / ドイツ語教育 / 第二言語習得 / 学習者言語 / インタラクション / コミュニケーションストラテジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、言いなおしや言いよどみなどの非流暢性(disfluency)を示すとされる言語現象を、学習者個人の発話プロセスにおける機能と他者とのやりとりにおける機能の両面から考察し、発話の協働構築の観点から捉え直すことを目指している。 令和2年度は、前年度に引きつづきインタビューデータを元に学習者の発話プロセスにおける機能の分析を進めるとともに、インタラクションにおける機能について考察をおこなった。インタラクションにおける機能の分析には、テレビ会議システムを用いたドイツ語母語話者・ドイツ語学習者間の多人数インタラクション場面のデータを用い、データの文字化作業をすすめた。平行して、流暢性・非流暢性を示す言語現象が第二言語習得研究においてどのように扱われてきているかについて先行研究の調査をすすめた。 インタビューデータによる学習者の発話プロセスの分析では、ポーズやフィラー、繰り返しなどの非流暢性を示す現象は特に副詞句(X)+動詞(V)+主語(S)の定動詞第二位の前後に頻繁に出現するが、学動詞後置のV-END構造はよどみなく発話される例が多いことが観察された。インタラクションデータの分析からは、非流暢性を示す現象は他者とのやりとりの中で発話の協働構築と気づき(Noticing)による学習につながることが観察された。 なお、前年度末に投稿したアジアゲルマニスト会議の記録論集が完成し、研究の途中経過について論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大とそれに伴う授業のオンライン化で大幅に時間が必要となったことから、データ分析に十分な時間をとることができず、海外(ドイツ)の共同研究者との研究打ち合わせも大きく制約をうけた。また発表を予定していた国際ゲルマニスト会議2020 (IVG2020)(2020年7月、パレルモ・イタリア)が延期となり、その分、成果発信の機会も限定的なものとなるなど、前年度に引きつづき進捗状況の遅れを取り戻すには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
多人数間のインタラクションデータの文字化作業をすすめることで分析データの基盤を拡張するとともに、インタビューデータ、インタラクションデータともに分析と考察をすすめる。研究成果については、FaDaF 2021(2021年6月、フライブルク・ドイツ、オンライン開催)および前年度から開催が延期された国際ゲルマニスト会議2021(IVG2021)(2021年7月、パレルモ・イタリア、オンライン開催)に参加し、研究発表を行う予定である(いずれも採択済み)。感染状況により、海外での研究交流は引きつづき極めて限定的にならざるを得ないことが予想されることから、他にもオンラインで実施される学会等での発表およびジャーナルへの投稿等、研究成果の発信方法と発信先を検討していく。
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Causes of Carryover |
理由:成果発表のための学会参加と海外の共同研究者との打ち合わせを目的としてドイツ、ヨーロッパへの渡航を予定していたが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、予定されていた学会がすべて延期となり、出張を中止したことで、予定していた旅費の支出がなくなり、令和2年度中の支出総額が減り、結果的に次年度使用額が生じた。
使用計画: 多人数話者間のインタラクションデータの転記作業をすすめ、研究補助者への謝金として支出する。またFaDaF2021、IVG2021を始め、オンラインで開催される国際学会への参加と研究発表を予定している。国際学会参加および研究打ち合わせのために旅費の支出を予定していたが、今後の学会参加・海外渡航の可否については、引きつづき新型コロナウィルスの感染状況をみながら検討する。
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