2018 Fiscal Year Research-status Report
イエズス会の日本人宣教者:元仏教僧侶の分析を中心に
Project/Area Number |
18K00905
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 美穂子 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (30361653)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 不干斎ファビアン / イエズス会の日本人 / 適応主義 / 天正少年遣欧使節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、4月以降から9月中旬まで大学の在外研修制度を利用してポルトガルに滞在した。その間、同国内の文書館において積極的に史料調査及び蒐集をおこない、帰国後には執筆、講演活動等を通じて、様々な成果報告をおこなった。主な調査先は、ポルトガルのアジュダ図書館、国立図書館、アカデミア図書館である。これらの文書館は、本研究とも深くかかわるイエズス会書翰集の古写本を擁する。またこの期間、リスボン大学、エヴォラ大学において、日本におけるイエズス会の経済活動について講演をおこない、ポルトガルはじめ海外の隣接する分野の研究者との知見交換をおこなった。特筆すべき事項としては、10月にミシガン大学において開催された日本史研究ワークショップJapan’s Long Past in Cambridge History of Japanで、The Christianity as a Sect of New Buddhism -focusing its appearance and adaptation policy-を発表し、参加者であった世界的な日本史研究者の間で好評を得た。本研究は2021年に出版される予定のCambridge History of Japanに収載される論文の準備報告である。2019年3月には人間文化研究機構のプレス懇談会で、「キリシタン版と製作に関わった日本人」について講演をおこなった。同プレス懇談会は、国立国学研究所の大英図書館所蔵『天草版平家物語』等の高精細画像オンラインデジタル公開に合わせておこなわれたもので、天草版などのキリシタン版制作に関わった日本人宣教者について、これまでほとんど関心が払われてこなかったこと、彼等の重要性等について指摘した。同プレス懇談会については、朝日新聞等で記事が掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イエズス会の日本宣教については、非常に多くの先行研究が国内外に存在するものの、日本人宣教者に焦点を当てたものは、多くはない。日本人宣教者の活動実態の解明や重要性を積極的にアピールした研究は、国内・海外でも高く評価され、ケンブリッジ・ヒストリーの章執筆者に選定された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究については、すでに日本国内において複数の論文で発表したものの、海外での認知度は未だ高いとはいえない。2021年に刊行予定のCambridge History of Japan収載論文を研究成果公開の到達点として、同論文の精度を高めるための史料解読や文献精読をおこなう。また、適宜海外の学会においても、研究成果を公開し、新たな課題の認識へとつなげる。
|
Causes of Carryover |
2018年度中の前期半年間は大学負担の在外研究に出ており、科学研究費を使う機会がなかった。また英語図書刊行のために想定していた校閲費用を、業者の選択によって、大幅に安く抑えることができたため。
|