2018 Fiscal Year Research-status Report
台湾民主の銅像・雷震の思想歴程研究―日本留学期・中国の役人期・『自由中国』期
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18K00911
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
工藤 貴正 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (80205096)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大正デモクラシー / 一般国家学(国法学) / 森口繁治 / 美濃部達吉 / G・イェリネク |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、研究課題「台湾民主の銅像・雷震の思想歴程研究―日本留学期・中国の役人期・『自由中国』期」の中、日本留学期の研究を中心に行い、2018年12月5日に台湾中央研究院で行われた「西方経験与近代中日交流的思想連鎖」国際学会において、研究題目「雷震在日本留学体験之中所形成的初期民主・憲政思想―囲繞恩師・京都帝大教授森口繁治与“国法学”以及回憶録≪我的学生時代≫与森口所著≪近世民主政治論≫」と題し発表を行い、この論文は『東亜観念史集刊』(台北市:政大出版社出版、2019.6)に掲載予定である。 また、2014-2017年度の科研費の研究課題「台湾変革期における中国から受容された2度の大正文学の影響に関する研究」を実施時に、京都大学に赴いて雷震と対比的な立場、すなわち中国共産党の党員になった馮乃超に関する資料を収集していた。この資料を使用して、「「文学革命」から「革命文学」の時代への転換(下)―馮乃超のマルクス主義文芸理論の受容」『国際文化研究科論集』20号、平成31.3(2019)を書き上げた。このことにより、中国共産党の知識人が淪陥区及び国民党統治という都市部(上海・重慶)と解放区延安という農村部では、共産党知識人のマルクス主義受容の違いがあることが明確に認められた。 さらに、2019年3月には、国民党党員として雷震と同様に思想弾圧を受けた殷海光に関わる資料の収集を行った。この資料は、雑誌『自由中国』電子版と『殷海光全集』に関わる資料であり、今後、二人の国民党党員が同時代の中国共産党をどのように観察、分析していたかを考察する資料としては重要であることが認められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014-2017年度の科研費の研究課題「台湾変革期における中国から受容された2度の大正文学の影響に関する研究」を実施時に、京都大学に赴いて雷震と森口繁治に関わる資料をすでに入手しており、今回は論文「雷震の日本留学体験における初期民主・憲政思想の形成―恩師・京都帝大教授森口繁治と「国法学」及び回顧録『我的学生時代』と森口著『近世民主政治論』を巡って」として素早く完成することができた。 現在、①京都帝大在籍時を中心に、雷震と森口繁治、佐々木惣一の関係を分析し、雷震における民主・憲政思想の特徴を更に進展させて考察している。②中国の淪陥区及び国民党統治という都市部(上海・重慶)と解放区延安における共産党知識人のマルクス主義受容の違いを、国民党の党員であった殷海光の視点を通して、雑誌『自由中国』に掲載の論文などを中心に分析している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、研究課題「台湾民主の銅像・雷震の思想歴程研究―日本留学期・中国の役人期・『自由中国』期」の経費を使用して2019年11月9-10日に、「東アジアの民主主義を台湾から考える―雷震日本留学百年・逝去四十年記念国際シンポジウム」を本学(愛知県立大学)で開催し、一般市民にも開放して、雷震と日本の関係を紹介する。 また、上記シンポジウムで「雷震の京都帝大での民主・憲政思想の形成」に関わる論文を発表する。 さらに、3月で収集した資料を使用して、もう一つの論文「殷海光の観察した1940年代中国共産党と毛沢東『文芸講話』を巡って」を書き上げる。
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Causes of Carryover |
今年度、2019年11月9-10日に、「東アジアの民主主義を台湾から考える―雷震日本留学百年・逝去四十年記念国際シンポジウム」を本学(愛知県立大学)で開催することを予定している。現在台湾から研究者7人を招聘することにし、うち3名には講演を依頼している。この国際シンポジウム開催の費用については、当初の申請段階の科研費額からは減額されていた。そこで、今年度支出される旅費、宿泊費、会議費などにかかる費用を出来るだけ多めに使えるように考慮した結果であり、このシンポジウム費用で誤差を修正する。
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Research Products
(2 results)