2018 Fiscal Year Research-status Report
The Formation and Transformation of Legal-Cultural Spheres and the 20th-Century United States
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18K00914
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
石井 紀子 上智大学, 外国語学部, 教授 (60407385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小滝 陽 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (00801185)
今野 裕子 亜細亜大学, 国際関係学部, 講師 (10707623)
佐藤 雅哉 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任研究員 (30816319)
牧田 義也 立命館大学, 政策科学部, 助教 (90727778)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アメリカ / トランスナショナル・ヒストリー / 20世紀 / 法文化 / 法文化圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアメリカ及び関連諸地域における法秩序や規範が、国境を越えた思想・制度の連関を通じて広域的に形成された過程を解明するため、歴史学研究に「法文化圏」という概念を導入し、法文化という法に纏わる諸事情の背後に存在する価値体系を分析することによって規範や理念が多方向的に連動・影響し合う過程を実証的に分析することを目的とする。初年度の2018年度は、1)定期的な読書会を通して広域的な法文化圏の生成過程を研究するための基盤となる先行研究を読み、2)研究分担者、招聘研究者、研究代表者がトランスナショナル・ヒストリーの観点から国境を越えて広域的に形成された法文化圏の生成過程に関するそれぞれの事例研究の報告を行う、という二種類の研究会を計13回開催した。ここでは、アメリカを中心とする法文化と法文化圏とは何か、という問いを議論し、理解を深めた。3年間の研究を通して、「法文化」及び「法文化圏」の生成過程を明らかにし、分析枠組みとしての理論化を目指す本研究の基礎となる研究実績として一定の成果を達成したといえる。 その結果、分担者及び研究代表者は2018年度の国際学会にて研究発表を行い、さらに2019年度開催される国際学会のAmerican Studies Association年次大会にて、二つのパネルにおいて成果報告を行うことも決定している。また2019年度は研究書出版に向けて原稿執筆、読み合わせ会が計画されており、次年度の研究成果発表のための基盤となる研究実績を積むことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度にあたる2018年度は「法文化」及び「法文化圏」の定義や理論的枠組みを研究するための基礎知識を修得し、基盤となる議論を積み重ね、理解を深めることを目的としていた。その目的遂行のために読書会を6回行い、6冊の研究書と研究論文一篇を読み、議論を重ねて「法文化」および「法文化圏」の定義や理論的枠組みの構築を図った。さらに分担者、招聘研究者および研究代表者の事例研究の研究報告、研究会を7回行い、各事例研究に「法文化」及び「法文化圏」の分析視角を用いることによってどのように研究の可能性が広がるかについて議論を行った。その結果、国内外の研究者との学術的ネットワークをさらに拡大し、2019年11月予定の国際学会The Annual Meeting of the American Studies Associationに向けて申請した二つのパネルが採択され、研究分担者及び研究代表者全員が研究報告を行うことになった。2018年度に実施された上記計13回の研究会での研究活動により、2019年度の国際学会ならびに研究書執筆による研究成果発表へとつながる研究実績を挙げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における残り2ヵ年の研究計画は概ね以下の通りとなっている。 1)「法文化圏」概念の精緻化:2018年度は、法文化圏に関わる論文や書籍の精読と討論を通じ、また研究報告会の実施により、本研究の根幹にかかわる「帝国」「コスモポリタニズム」「トランスナショナル・ヒストリー」「ボーダーランド」「ネットワーク」といった近接する概念が先行研究においてどのように用いられているのかを把握し、これらの分析枠組みを射程に入れつつも、新たに「法文化圏」という概念を導入することで、人や組織、思想の移動・伝搬・移転・交流による規範は理念の変容という事象について、いかなる歴史的説明が可能になるのか綿密な検討を行った。これらの試みにより、国や地域をまたいで生成される行動基準や原則の存在について共通理解を得ることができたが、同時に「法文化」そのものに対する理論的前提が十分に共有されていないことが新たな課題として浮上した。従って、2019年度前半には、特に「法文化」に関わりのある先行研究を渉猟し、広域的あるいは地域横断的に形成される、法に纏わる文化についての体系的な理解を促進するとともに、同論理を個別の歴史的事例に適用する方法について討論を重ねる予定である。 2)研究所の執筆:上記の理論精緻化を経て、2019年度後半には法文化あるいは法文化圏概念を用いた研究論文の執筆に取り掛かる。原稿の相互批評や改稿を重ね、研究書として纏める予定である。 3)教科書の執筆:さらに本研究課題の最終年度である2020年度には、上記研究所所収の論文を学部学生の読みやすい表現に改め、教科書用に書き下ろす予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度に予定していた2名の国外資料調査旅費が、急病及び国際学会参加のために2018年度内執行ができなくなったため、その金額966,212円が次年度使用額に繰り越された。2020年度分として請求した助成金と合わせて、2020年度は合計4名の国外資料調査旅費に使用する計画である。
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Research Products
(8 results)