2018 Fiscal Year Research-status Report
5~13世紀ユーラシア東方における都城と仏塔の比較史的研究と3Dアーカイブ作成
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18K00918
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
武田 和哉 大谷大学, 文学部, 准教授 (90643081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 真司 京都大学, 文学研究科, 教授 (00212308)
正司 哲朗 奈良大学, 社会学部, 准教授 (20423048)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 仏塔 / ユーラシア東方 / 都城 / 3Dアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本や中国を含むユーラシア東方にて、主に5~13世紀の時期を中心として各地に造営された都城と、仏教のシンボル的モニュメントである仏塔に焦点を当て、双方の果たした役割や位置関係、モニュメントとしての特質等の分析を通じ、その背景にある当該時期の政治・経済および社会における仏教の在り方と、その歴史的変遷について、歴史学・考古学・仏教学等各分野の立場から多角的視点の比較研究を行う。 2018年度は、採択後に研究班全員が参加して発足会議を行い、本研究の主旨と目標の再確認、および交付予算を踏まえての活動内容の検討、2018年度の計画策定を行った。その結果、海外調査は中国と韓国で実施することとし、また日本国内で木造塔・石塔の調査を行うこととした。 上記方針を踏まえて、夏期には中国内蒙古自治区内において遼・金時代の仏塔を中心に調査と撮影を行い、3Dモデル製作を試行した結果、ある程度良好な感触を得た。さらには、この調査所見をもとにモンゴル国内に所在する契丹時代のものと考えられている仏塔(バルス・ホト1城所在仏塔)との形状比較を行った。その結果、このバルス・ホト1城所在の仏塔は、16世紀以降、少なくとも二度にわたり修築されていることがわかり、近年に行われた修築の範囲は、下層部分まで及んでいて、恐らく、営造当初の原型をとどめていないこと等の見解に至った。 このほか、国内でも夏期・秋期に奈良県内・京都府内・滋賀県内に所在する木造塔の調査と撮影作業、および3Dモデル製作を行って、問題点の洗い出し作業を行った。 以上の経過により、いくつかの技術的問題点を把握するに至ったので、当初の研究目標を達成するために必要な技術的課題点の克服や方策等の検討を行った。また、日本国内および中国国内の当該時代の仏塔のリストを作成し、今後適宜必要な学術所見や情報を付加しつつ、データベース化していくことにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
内蒙古自治区での調査成果や、モンゴル国内の仏塔との比較分析において、修築や営造にかかわる所見を得られるに至ったことは、本研究が目指すアーカイブ化の資料的価値と意義を再確認できた点でひとつの進展であったと思量する。 他方、日本国内の仏塔に関しては、日本の寺院の特有の形状(庇や瓦葺きが長く張り出す)や、樹木や塔頭等建物に近接しているという環境・ロケーション等の影響もあって、対象物の撮影が困難な事例が散見される。さらには、文化財保護法の観点から、ドローン等を使用した撮影が規制されている事例も多々あるので、3Dデータ化に関する手法の確立にはさらに時間を要している。今後は、建造物報告書等の活用も視野に入れつつ、研究班全体で議論をしながら課題点を解決して行く方向である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、引き続き中国国内での調査を行い、特に仏塔と都城との関連性についても検討・分析を行う予定にしている。また、課題点となっている国内寺院の仏塔の3Dモデル製作に関しては、新たな手法の開発を目指すこととしたい。 このほか、国内外を問わず、本研究が対象としている仏塔は何らかの修築の手が加えられているので、こうした点も反映したアーカイブ製作を目指すこととしたい。具体的には古写真などを探索して、修築以前の様相や状態を把握して、今後の3Dアーカイブ成果物に加味していきたいと考えている。 さらに、従来研究ではあまりなされていない石塔についても対象に含めることとし、日本史・東洋史の専門研究者と情報処理の専門家との学融合的な研究を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度に国内調査をさらに数件実施する予定であったが、前述のように技術的課題点が認識されたため、いったん調査の実施を見合わせ、問題点の洗い出しと解決に向けた作業を優先させることとしたため、次年度使用額が生じる結果となっている。
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Research Products
(1 results)