2020 Fiscal Year Research-status Report
徳川幕府御家人伊賀者の制度史的研究―関係史資料収集とその総合的把握―
Project/Area Number |
18K00926
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
高尾 善希 三重大学, 地域拠点サテライト, 准教授 (20812598)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 忍者 / 伊賀者 / 幕臣 / 御家人 |
Outline of Annual Research Achievements |
今期の研究では、徳川幕府伊賀者の松下家文書の検討・分析を中心にしている。また、松下家文書以外の史料をも検討に入れることを予定していた。しかし、コロナ禍の状況により、出張などができなかったため、その他の史料を検討することができず、予算も次年度に繰り越した。そのため、最初に意図したものに較べれば、完全なものとはいえないが、ここに今回の研究における今年度の概要を記す。 将来、松下家文書の内容をひろく紹介することを期すため、同家文書の内容の翻刻と校正を行った。松下家文書の松下家は、家の禄高20俵2斗2合5勺2人半扶持で、伊賀者であると同時に、御家人という家格にある。御家人とは、幕臣の家格のひとつで、幕臣の中には、大名(260家)・旗本(5200家)・御家人(1万7000家~1万8000家)がある。御家人は、伊賀者のみならず、数多くの家があり、前述の3つの家格の中で、一番の多数派である。同家文書を検討することは、伊賀者研究(忍者研究)の面からも、さらにひろく御家人研究の面からも、重要な意義を有するといえる。数の面からいえば、幕府という組織を下支えした家の研究であり、意義は忍者研究にとどまらないといえる。 この家の歴史を記しているものは、「系譜一」「系譜二」「系譜三」という簿冊史料である。また、それに枝分かれした簿冊史料もある。これらの翻刻・校正を中心に行った。松下家文書や他の伊賀者関係史料の概要は、『忍者の末裔 江戸城に勤めた伊賀者たち』(KADOKAWA、2017)・『忍者学講義』(中央公論新社、2020)の拙稿などにおいて紹介されているが、これらの史料が紹介されれば、検討することができる状態になる。全文の作業はもうすぐ終了の予定である。 また、徳川幕府伊賀者の関係史料の所在情報や史料画像を収集して、伊賀者研究に資する環境を整えることを目標にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
徳川幕府伊賀者の松下家文書は、簿冊史料39点(「系譜一」「系譜二」「系譜三」「系譜之内由緒書類并当用書控」「系図并伝器」「系譜之内親類縁者遠類」など)、状史料8点あり、簿冊史料がほとんどを占める。簿冊史料の家譜類がこの文書群の中核といえる。原文翻刻はこれらの史料を中心に行い、現在、翻刻済・校正済の史料文字数は30万文字以上に及んでいる。この史料は、今後、他の史料との関連の上で考察する必要がある。国立公文書館所蔵史料(伊賀者が幕府に提出した由緒書類)、練馬区指定文化財の金石文史料(伊賀者が奉納した鳥居における人名・文章)、江戸東京博物館所蔵史料などの調査が終了し、これら他の史料も検討し得る段階まで、研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の折ではあるが、可能な限りにおいて、以下のことを予定している。①徳川幕府伊賀者松下家文書の翻刻・校正作業を終了させる。②徳川幕府伊賀者の史料の所在情報が職場(三重大学国際忍者研究センター)に寄せられており、今後はそれらの史料調査や聞き取り調査を予定している。③伊賀者の遺構の発掘調査の内容について調査をする。
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Causes of Carryover |
去年度においてコロナ禍により研究活動が制約されたため。次年度の調査に使用する。
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Research Products
(1 results)