2018 Fiscal Year Research-status Report
牛車の中世的展開に関する研究―文献とモノによるアプローチ―
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18K00935
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
木村 真美子 学習院大学, 付置研究所, 研究員 (10815062)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 車輿等書 / 牛車 / 洞院家 / 京都御所 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載した「研究目的」「研究実施計画」に照らし、以下の進捗をみた。 ①史資料の収集:本研究における主要史料で、中世洞院家の牛車絵図を含む『車輿等書』については、所蔵先の前田育徳会尊経閣文庫へ調査に赴き、写真の焼付を購入した。現在は、それを利用して翻刻作業を進めている。そのほか、京都国立博物館、奈良国立博物館、京都文化博物館、和歌山県立博物館、和泉市久保惣記念美術館、春日大社国宝殿、下鴨神社、鹿王院等の史料保存機関や寺社に赴き、牛車関係・西園寺家および洞院家関係の史料や絵巻等の調査を進めた。 ②研究会の開催:東京大学史料編纂所・同生産技術研究所において研究会を開催した。模型製造においては現存の牛車から段階的に遡れる近世史料が必要であるとの研究協力者(腰原幹雄東京大学生産技術研究所教授)の要請により、近世の牛車修理関係史料の翻刻が急務であるという課題が浮上し、新たに研究協力者(渡邉正男東京大学史料編纂所准教授)を招聘し、宮内庁書陵部所蔵『〈自宝暦至文久〉御車新調並修復書類』の翻刻に着手してもらった。 ③牛車の調査:宮内庁京都事務所・京都御所に赴き、牛車(八葉車・杏葉車)および参考としての輿(御車輿)の調査・撮影を行った。また、祭事(御霊祭)における御霊神社所蔵の牛車の運行状況の調査を行った。 ④成果公開活動等:2018年7月に東京大学において開催された「陽明文庫設立80周年記念特別研究集会」への協力と記念図録への執筆を行った。また、2019年2月に長野県立長野高校金鵄会館において公開講座【続・古典を読む―歴史と文学―】において「牛車考―牛に引かれて内裏に参る―」と題して市民向けの講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『車輿等書』の翻刻については、同時代の古記録の調査が必要になったため、当初の予定より時間を要しているが、研究実績の概要欄に記したとおり、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
①引き続き、『車輿等書』の翻刻作業を行う。 ②『車輿等書』の理解のために同時代史料(特に鎌倉時代後期~南北朝・室町時代中期)の古記録を読解する必要が生じたので、その作業も行う。 ③工学的な見地からは現存する牛車への理解が重要であり、現在から時代を段階的に遡って検討する必要がある。そのため、近世の史資料へのアプローチの方法として、『御車新調並修復書類』の翻刻を継続する。
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Causes of Carryover |
京都における牛車そのものの調査を優先したため、長崎での史料調査が実施できなかった。次年度に実行する所存である。
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