2020 Fiscal Year Research-status Report
日本古代における律令官僚制と女官制度成立に関する研究
Project/Area Number |
18K00936
|
Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
伊集院 葉子 専修大学, 文学部, 兼任講師 (30812028)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 女官 / 女性豪族 / 采女 / 後宮十二司 / 官僚制 / 律令国家 / 王権 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究実績は,大別して以下の3点である。 1,律令国家の女性官僚の出仕ルートの一つである「采女」の成立過程について,国内だけではなく東アジア世界の交流・交渉の中に位置づけて検討を開始し,研究会で報告した(「東アジアの「采女」と「女郎」」)。 2,女官研究にジェンダー視点を導入することによって女性が行政システムで果たした役割が解明されてきたことを,事例を提示したうえで指摘した(「女官は、なぜ古代社会で活躍できたのか」(総合女性史学会編『ジェンダー分析で学ぶ女性史入門』岩波書店)。女官・官僚制に関してだけではなく,女帝を輩出した古代社会の特徴等も,研究史を簡潔に紹介しながら明らかにした。学生を含め歴史に関心をもつ人々に最新の研究成果を普及する図書となったと認識している。 また,奈良時代~平安時代前期の王権・地方行政・女官等の特徴をまとめた英語圏初学者向けの論考を,アメリカ合衆国在住の研究者とともに執筆中である。 3,研究成果の公開について。歴史民俗博物館の企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」に展示プロジェクト委員として加わり,「古代の政治空間における男女」の展示準備および図録執筆を行なった(図録『性差(ジェンダー)の日本史』,担当部分「古代の儀式と男女官人」「伊福吉部徳足比売臣」)。ジェンダー視点を全面的に掲げた歴史民俗博物館初の取り組みのなかで,古代の政治と女性の関係について,新しい研究成果をビジュアル・文章ともにわかりやすい形で提示できた。当該研究課題「日本古代における律令官僚制と女官制度成立に関する研究」は代表者・伊集院による単独の研究であるが,展示プロジェクトでは当該研究に関する集団的・多角的な検討を受け深化させることができ,到達点を展示・図録に反映させ社会に還元できた。この点でも意義のある取り組みだったと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は新型コロナウイルス感染症の蔓延のため,予定していた国内外の調査が実施できなかった。このため,「やや遅れている」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究の推進方策と課題は以下の通りである。 ①采女制度の成立過程を東アジア交流史に位置づけて考察し論文・図書として刊行する。 ②ジェンダー視点による奈良時代~平安時代前期の王権・地方行政・女官等の分析をまとめ,海外に発信する。 ③采女制度の研究推進のため、必要な調査を行なう。ただし,新型コロナウイルス肺炎の蔓延を考慮し,慎重に実施することとしたい。
|
Causes of Carryover |
2020年度に新型コロナウイルス肺炎の蔓延により,国内外の調査が実施できなかったため。 2021年度は可能な限りのコロナ対策を施したうえで調査を実施したい。
|