2019 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ陸軍第8軍法務部史料に基づくBC級戦犯横浜法廷における弁護制度の研究
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18K00938
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高澤 弘明 日本大学, 生産工学部, 講師 (00459835)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | BC級戦犯 / 戦犯裁判 / 横浜法廷 / 横浜裁判 / 軍事法廷 / アメリカ第8軍 / 弁護制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度平成31(2019)年3月12日から22日にかけて、アメリカ国立公文書館(以下「NARA」と称する)で収集した史料の分析作業を中心に進めた。上記期間に収集した史料の内容は、NARAで保管する米陸軍第8軍の史料及び横浜法廷で審理された事件ファイルである。これらNARAで保管されているGHQ関連文書については、日本国内でも国会図書館憲政資料室で閲覧できるようになっているが、本報告者が前年度に収集した史料を分析したところ、まだ日本国内では閲覧できない史料であり、なおかつ横浜法廷での戦犯審理の実態及び、減刑の判断基準を知る上で非常に重要な史料も含まれていた。具体的には、横浜法廷を管轄する第8軍やGHQ法務部が、法廷の適正手続き(due process)の保障に対し神経質になった時期があり、今回、確認した史料では、その原因がドイツにおけるニュルンベルク継続裁判での手続ミスの発生と、そのミスによって戦犯裁判に対する国際的批判が高まったため、GHQが同法務部に対して、横浜法廷での適正な審理手続きの注意喚起を促していたことが判明した。このように本史料から、横浜法廷も東京裁判と同様に、先行するドイツでの戦犯法廷の影響を受けていたことが分かり、非常に興味深いものがある。現在、本報告者は、このGHQの注意喚起によって、横浜法廷の審理にどのような影響を及ぼしたのかについて、収集した関連事件の法廷速記録の分析を進めている。また、減刑史料に関しては、被告人及びその支援者からの減刑嘆願書が大量に確認され、それらの量刑の影響も併せて分析している。 なお、前年度にNARAに保管されている米陸軍通信部隊が撮影した東京裁判・横浜法廷関連写真(1,660枚)の内容分析とそのリスト化作業が終わり、本年度はその概要を研究資料としてまとめ、現在(2020年4月)、査読審査を受けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究対象となるNARAの文書史料が想定よりも膨大であって、なおかつ研究テーマに関する核心的史料の確認に至っていない。また令和2(2020)年2月から3月にかけてNARA及び日本国内の史料館での調査を行う予定であったが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行により調査が出来なくなり、現在、これまで収集した史料の再分析及び、オンライン上で公開されている史料等の分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、COVID-19の流行により、NARA及び日本国内の史料館等が閉鎖され、資料調査ができない状態となっている。もし本年度内のNARAの再開が見込めない場合、本件研究課題の推進方策について大幅に変更する必要性が生じる。そもそも本課題の目的は、NARA所蔵の米第8軍史料に基づいて横浜法廷の弁護システムを分析するもので、その分析のためには同法廷が開廷していた全期間の史料が必要であり、現時点において収集した史料は完全ではない。現況では本年度内にNARAの閉鎖が解除されれば、遅れを取り戻す余地も残されているが、今後もNARAの閉鎖が続き2021年3月末までの現地調査が不可能となった場合、研究手法を変更せざるを得ない。そのような場合の対応として、これまでにNARAで収集した10数件の事件史料をサンプルデータとして位置付け、横浜法廷の弁護システムの部分的考察を試みることとする。その際の考察対象となる事件としては、①死刑宣告を下した重罰事件であり、②なおかつ、日本の国立公文書館には、横浜法廷に関与した日本人弁護人の寄贈史料が保管されているが、そのうちNARAの史料と同等の史料レベルが保たれている事件(例えば、弁護人の事件に関する回顧録や、あるいは弁護活動で収集した資料・メモ等が残されている事件)を対象とする。 何れにしてもNARAの再開動向を注視し、現地の研究協力者とも連絡を取りながら、有効な研究計画を立てる予定でいる。
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Causes of Carryover |
令和2年3月15日から3月26日にかけて、本研究目的の主眼であるアメリカ国立公文書館への海外出張調査を予定していたが、新型コロナウィルス(COVID-19)の大流行により調査を断念した(米公文書館は3月13日の開館を最後に全館閉鎖)。また、国内の公文書館も閉鎖となり、当初予定していた使用額に大幅な差異が生じてしまった。
今後の使用計画であるが、現在、米公文書館が再開した場合の渡航費用に充てる予定である。
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