2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00944
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
尾下 成敏 京都橘大学, 文学部, 准教授 (70378496)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 戦国時代 / 文化史 / 和歌 / 蹴鞠 / 連歌 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、①東海地方に形成された今川分国の文芸史に関する考察、②基礎資料となる16世紀の鞠会(蹴鞠の会)一覧表の作成に取り組んだ。 多少具体的に述べると、上記①の課題については論文化を進め、その成果は、2019年5月刊行の論文「戦国期今川氏と和歌・連歌」(『年報中世史研究』44号掲載)として公表されることになった。この論文では、武事(おもに軍事行動)をはじめとする政治過程との関連から、戦国期の今川分国における歌壇・連歌壇の展開を動態的に跡付け、例えばつぎのような点を明らかにした。(ア)16世紀半ばの当主義元の時代には、和歌・連歌のような文事に心を懸ける動きと、文事を抑えて武事を優先する動きがせめぎ合っていた。(イ)義元の後継者氏真は文事に心を懸けようとする志向を持ちながらも、それが叶わず、今川分国の崩壊という事態を迎えた。 今川分国を検討の対象に据えたのは、戦国時代の地方文化のなかで、今川文化が中国地方の大内文化や北陸地方の朝倉文化とならぶ、戦国三大文化の一つとされてきたことが理由である。また武事との関連から文芸史の展開を動態的に検討したのは、現段階の中世末期(戦国争乱期を含む時期)の地方文化史の研究において、地方文化の展開過程を動態的に復元する試みや、文化と武事の関係を問う試みが不十分と考えるからである。それゆえ、こうした問題意識に立つ上記①の課題は、それまでの研究とは異なる位置に立つものと言える。 一方、上記②の鞠会一覧表の作成については、1551(天文20)年から1600(慶長5)年までの、おもな公家日記に見える鞠会の記事を収集し、データ入力を進めた。16世紀の鞠会の事例集積が進んでいない現段階において、こうした一覧表の作成は、戦国時代の文化史研究の土台作りにつながるものとなろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記①の今川分国の文芸史に関する考察が論文として公表される時期は、2019年度であるが、2018年度中には論文化を行っている。また上記②の16世紀の鞠会一覧表の作成については、事例の収集や入力が順調に進んでいる。それゆえ、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記②の16世紀の鞠会一覧表の作成については、今後も事例の収集とデータ入力を進め、2019年度中に、おもな古記録からの事例収集を終了させる予定である。また交付申請書の研究実施計画に記載した公家の飛鳥井家の在国(地方滞在)に関する考察については、関連史料の収集とその検討を進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、史料調査の計画を変更したためである。すなわち遠隔地での史料調査を2018年度ではなく、2019年度に行うことにした。これにより、2018年度中の旅費使用額は、当初想定したよりも少なくなっている。
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