2020 Fiscal Year Research-status Report
1970年代~80年代の消費者運動の再編成過程に関する実証的研究
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18K00946
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
原山 浩介 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50413894)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 市民運動 / 消費者運動 / 革新 / 公害 / 食料管理法 / 資本主義 / 国民経済 / 生活協同組合 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に現地調査を集中させることを計画していたのだが、COVID-19の影響により、聞き取り調査自体が難しくなった。このため、若干の資料調査を行ったほかは、研究室において可能な資料・情報の整理と執筆等の活動に専念することとしつつ、①1970年代以降の前衛に位置した京都の消費者団体に関わる分析と、②消費者運動を構造的に条件付けた1970年代以降の資本主義と政治の変容の、二つの方向からの論稿のとりまとめを先行させることとした。 ①については、京都生活公害協議会に焦点を当てつつ、京都消団連、洛北生協/京都生協との関係のなかでの活動の展開とその限界を検討した。ここには、政治的な党派性が絡みながら、ここに示した団体以外の諸団体との間に距離があり、そのことが活動の展開の制約になったこと、しかし他方でそれら諸団体とは異なる会員の定着性の高さや、他の諸団体との比較において活動の立ち上がりが早かったといった特徴があったことを示した。本来的には、ここに「革新」の内部矛盾と、地域史/消費者運動史のなかで「革新」が有した動員上の/生活思想上の意義についてまとめるべきところではあるが、これらについての本格的な検討は課題として残すこととなった。 ②については、学会報告で、1970年代以降の米をめぐる段階的な自由化過程を、国民経済の解体、ならびに、流通の自由化/国際間の貿易自由化という二つの意味での資本主義の「自由化」過程として捉え、これとの関わりにおいて消費者団体がどのような動きを取ったのかを検討した。煎じ詰めれば、消費者団体の立場は、国民経済の解体を阻止しつつ、「消費者にとっての共通の利益」の擁護を旨とする消費者運動の立て方の、ほぼ最後の闘いとしての米問題への対応を行ったことを示した。この報告については、2021年度に論稿として活字化される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に続いて、2020年度も現地調査(聞き取り調査)を行う事ができなかった。このため、当初想定していた、現場性に依拠した調査・研究という形から、資料を中心にした研究へと変更せざるを得なかった。その分、資本主義の変容、国民経済の解体、生活思想と「革新」といった、構造的な議論に先行して取り組むことはできたものの、そもそも聞き取り調査を前提としていたため、まとめにくさがあった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度のCOVID-19の状況がどのように展開するのか予断を許さないため、一方で聞き取り調査を軸に据えたとりまとめを検討・計画しながらも、他方で聞き取り調査が困難になることを想定した資料・政治経済史・社会運動論に力点を置いたとりまとめに向けた準備を同時に進めていくこととし、研究として禍根が残らないようにする。本研究では聞き取り調査の対象が高齢者であり、特にこれまで関係を持っていなかった対象者へのオンライン等による調査は困難であると理解している。そのため、聞き取り調査の実施を断念するか否かを秋頃に見極めた上で、最終的な研究のとりまとめにかかることにする。
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Causes of Carryover |
聞き取り調査を含む現地調査を中心とした研究計画を立てていたが、COVID-19の影響により実施が困難だったため、次年度に計画を繰り延べざるを得なかった。 原則的には、次年度に現地調査を実施するが、それが現実的に可能か否かを早期に判断し、不可能な場合には資料を中心とした調査に切り替えて研究・予算執行を行う。
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Research Products
(2 results)