2021 Fiscal Year Research-status Report
1970年代~80年代の消費者運動の再編成過程に関する実証的研究
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18K00946
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
原山 浩介 日本大学, 法学部, 准教授 (50413894)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機農業 / 消費者運動 / 食糧管理法 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度に引き続き、現地調査が困難な状況が続いたことから、出張を伴わない形のデータ整理と分析を中心とした研究とし、1970年代以降の消費者運動の評価、ならびに食管制度をめぐる消費者団体の対応の変容を分析した。 前者の1970年代以降の消費者運動をめぐっては、有機農産物をめぐる産消提携について、市場流通との対峙のなかでこの方法論にとどまろうとする立場と、市場流通への対応として規格・基準の制定にコミットしようとする立場の間で、運動内部で論争があり、その過程で社会運動としての関心の幅が狭まっていったことを検証した。この論点をめぐっては、2001年に地域の共同購入グループの変容として論文にまとめたところではあるが、今回はむしろ有機農業をめぐるイデオロギー形成とその変容に着眼するため、日本有機農業研究会を舞台とした議論を軸に検討を行い、2001年の自らの研究と合わせて総合的・立体的な理解を形成した。 後者の課題については、戦後のコメ不足から、自給達成、そして輸入受入までの過程で、消費者団体がどのような論理的な裏付けを以て、コメをめぐる主張を展開し、あるいはその主張を変容させたのかを検討した。また、1970年代以降に設立された新興の消費者団体のなかに、既存の食料・農業政策への批判との関わりで、少し特殊な主張、すなわち食管制度の堅持を前提としない輸入阻止の主張を展開するという交錯した状況があったことも併せて検討した。そこでは、コメに対する消費者のアクセスの平等を担保にしようとするモメントと、その一方で安全を求めるなかで必然的に生ずる商品の差別化のモメントが交錯しつつ、全体として食料(コメ)に対する共通認識が解体する過程として分析した。 これら研究は、いずれも中間的なとりまとめを行った。前者について『(第3期)生協論レビュー研究会(下)』に論文を執筆し、後者については日本農業史学会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関係者への聞き取り調査、および遠隔地での資料調査を思うように進めることができなかったため、当初において目指していた、とりわけ1970年代以降の関西地域における消費者団体の動きについての検討が十分に進んでいない。これまでのところ、手元の資料、および近隣の図書館等で入手可能な資料については検討を進めてはいるが、現地調査を欠いた形になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
新年度は、これまでと異なり、移動や対面による調査がこれまでと比べて行いやすくなることが想定されるため、現地調査を集中的に実施することとする。また、この間の計画変更(調査期間の延長)により、当初想定していた以上に、消費者運動、および消費社会の変容過程に関する分析を進めることができているため、単行本等の、当初は想定していなかった新たな成果のとりまとめを行うことも検討し、そのための準備も最後の一年で実施したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染状況に鑑み、出張を伴う調査を見合わせたために、研究計画に変更が生じ、その結果として残額が生じた。新年度は、出張がこれまでとくらべて容易になると考えられるため、出張を含め、これまで遂行できなかった調査を中心に経費を使用する。
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Research Products
(3 results)