2018 Fiscal Year Research-status Report
幕府役所史料の整理・活用による近世法制史・身分論の新展開
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18K00956
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧原 成征 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (20375520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新田 一郎 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40208252)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 江戸幕府 / 法制史 / 身分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の基盤的・日常的作業と位置づけた、東京大学法制史資料室所蔵文書の調査を進めた。同コレクションについては、史料1点ごとのタイトル程度の仮目録はすでに存在しているが、作成年代や作成者、出所・地域などがほとんど採られておらず、有効な利用・参照のためには目録を詳細化する必要があった。今回の研究課題ではそのうち幕府役所・役人史料の全体である約1000点についてその作業を進める予定である。 初年度である本年度は、前年までの予備調査時の成果・確認分をふくめ、約半数に当たる500点ほどの目録をとることができた。大名・旗本の家政文書、幕府役所・役人の記録、とくに全国各地の幕府役人から上司へ、諸家から幕府への伺いの記録や、公事方御定書系の法令集、先例集、刑罰関係の解説書などが多くを占めている。 それらのうちには中田薫氏旧蔵のもの、石井良助氏の諸研究や既刊行の法令集・史料集と関係の深いものが多く、中田氏らのメモがあるものもあり、法制史研究の通説を形づくった基盤の一つをなすコレクションであることがあらためて確認された。またコレクションのうち、補修が必要とみなされた史料の一部について、補修を行った。 身分論の新展開への具体的な検討の試みとしては、本コレクションにも写本が含まれる御仕置例類集を分析することによって、身分の語義から日本近世社会の変化を考察する研究報告を行った。従来は、研究上の概念としての身分と、史料用語としての身分とが必ずしも区別されておらず、後者の検討を深めることによって、近年停滞している感のある身分論を刷新しうる可能性を示すことができた。また、検地におけるかわた身分と百姓身分との関係について、最新の研究成果の書評を通して考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の初年度であるが、基礎的な作業の対象となる史料群1000点のうち500点以上の目録詳細化を行うことができたことは当初計画以上の進捗であるといえるが、他の関連史料群の調査や研究史の検討などがやや遅れているため、全体としてはおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度・再来年度の2年間で、東京大学法制史資料室所蔵の幕府役所・役人関係史料については、予定通り、その全体の目録詳細化を終えることができると考えている。ただ、資料整理に従事してくれる大学院生の人数・都合や多忙によって、多少の影響が出ることも想定される。 また上記史料の性格や内容の吟味をどこまで行うか、すなわち、内容の検討を重視するか、あるいは作業の進捗を優先するか、悩ましい面もある。つねに模索しながら進め、近世身分論・法制史の新展開に寄与する成果が得られるよう努力したい。
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Causes of Carryover |
資料整理・資料収集に謝金を支出したが、大学院生等の学業上の多忙やスケジュールが合わない等で、予定よりもやや支出が減った。また、調査旅費についても多忙や史料所蔵情報確認、デジタル化の状況把握等に手間取り予定よりも支出が少なくなった。次年度はもう少し早めに資料整理・収集、資料調査旅行の計画を進めたい。
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Research Products
(2 results)