2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00959
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
上田 長生 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (10599369)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近世日本 / 加賀藩 / 十村 / 御用留 / 藩領社会 / 地域的入用 / 飢饉 / 海防 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、石川県・富山県域の史料所蔵機関が所蔵する膨大な十村文書について、御用留・触留類を中心に収集・分析を進めた。金沢市立玉川図書館近世史料館7回・富山大学附属図書館3回・富山県立図書館5回のほか、石川県立歴史学物館・氷見市立博物館・富山市郷土博物館・宝達志水町教育委員会など10機関でのべ29日の調査を実施し、大部の御用留約500点を含む1500点余りの文書の撮影・収集を行った。特に、金沢市立玉川図書館近世史料館では学生バイトを組織して、効率的に多数の史料を撮影することができた。とりわけ、十村の御用留の白眉である富山県立図書館の越中国新川郡の伊東文書・杉木文書について、御用留の半数近くを撮影でき、また、越中国射水郡島村(現・射水市)の折橋家では、これまで十分撮影・活用されていなかった同家所蔵文書の調査を、射水市新湊博物館と共同で実施し、当初予想していなかった大きな調査の進展をみた。 こうした調査と過去の収集文書を分析し、加賀藩十村が有していた身分意識に関する研究発表を令和元年8月の越中史壇会研究発表大会で行い、好評を得ることができた。その成果は、論文化し、次年度7月刊行予定の『加賀藩研究』第10号に掲載決定している。加賀藩十村による藩領社会の支配・運営を理解する上で重要な、十村寄合とその場に関する論考2本をまとめ、次年度6月刊行予定の『日本史研究』第694号に掲載が決定し、7月刊行予定の加賀藩研究ネットワーク編『加賀藩政治史研究と史料』(岩田書院)にも単著論文が掲載される予定である。また、加賀藩領の地域的入用に関する史料紹介も公表することができた。 また、他藩の研究動向を把握するために為に、加賀藩研究ネットワーク・尾張藩社会研究会などを中心に開催される四藩合同研究会や歴史学研究会大会などに参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、十村文書の調査・撮影を29回実施することができたが、そのうち3回は十村折橋家のご子孫宅での調査を実施し、相当数の文書を撮影収集することができた。また、氷見市立博物館所蔵でこれまでほとんど知られていなかった十村文書の調査に取り掛かることができた。こうした点は、本研究課題開始当初では予期していなかったことで、今後、それらの収集文書を分析し、研究を進めていくことによって、想定以上に加賀藩研究、日本近世史研究を深化させていくことができると考えている。 こうした収集史料を用いた分析では、越中史壇会研究発表大会での研究発表において富山県の加賀藩研究者からの有益な参考意見を受けることができ、上記の折橋家文書の調査を含む、2件の新たな調査につながった。本研究課題の大きな目的である十村による藩領社会の支配・運営について、十村寄合の実態と展開に関する論文2本、加賀藩後期の地域的入用に関する論文1本と史料紹介1本、加賀藩十村の身分意識に関する論文1本の、次年度の刊行が決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度である次年度も引き続き、石川県・富山県域の史料所蔵機関での調査を実施したいと考えているが、図書館・博物館の臨時休館が相次いでいるため、その開館しだいによって、調査の進展度合いが異なってくることが予想される。 もし所蔵機関が開館するなら、これまで調査できていなかった南砺市立井波図書館のほか、国文学研 究資料館所蔵の十村文書の調査にも取りかかり、十村御用留の悉皆的調査を進めたい。その際は、平成30年度・令和元年度と同様に、学生アルバイトによる大量の文書撮影を、金沢市立玉川図書館近世史料館・宝達志水町教育委員会・富山県立図書館などで実施していく予定である。 収集史料の分析・成果発表については、すでに次年度は加賀藩研究ネットワークなどの他、令和3年度の大阪歴史学会大会報告などを目指して、研究を進めていく予定である。そうした報告を経て、論文の成稿・投稿につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
物品が予定より安価だったため。研究は順調に進んでいる。
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