2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on the organic linkages between sea and mountain livelihoods in early modern society.
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18K00960
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
塚本 明 三重大学, 人文学部, 教授 (40217279)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海女 / 海藻 / 肥料 / 飢饉 / 海と山 |
Outline of Annual Research Achievements |
磯場で採取される海藻が、伝統的には食用以外に田畑の肥料として利用されるという、まさに海と山の生業の有機的連関についての視点を前年度に見出し、それを発展的に検討した。江戸時代の農業指南書を集めた『日本農書全集』から海藻についての記事を集め、肥料としての有効性が意識されていたこと、飢饉対策の食糧備蓄としても利用されていたことなどの史実を確認した。19世紀以降に国際商品化するテングサも、伝統的には肥料として用いられており、この観点は今後の分析視角として非常に有益だと考える。 当初は本研究を前提として、2022年度から学際的な総合研究、科学研究費基盤(A)「19世紀以降の東アジアにおける海藻の生産・流通・消費に関する総合研究」に移行する予定であった。だが新型コロナウイルス感染の影響により現地調査が制限されたため、1年間の延長を余儀なくされた。ゆえに、2022年度は新たに開始した基盤A研究と深く関連させつつも、従来の調査事業の集約を計ることになった。 特に前年度から始めた静岡県下田市須崎の財産区文書調査については、地元との信頼関係を構築して、2022年3月に古文書の展示・解説会を開催し、海藻漁とその加工・流通に関する説明も行った。住民の思い出話は非常に有益な情報であり、大いに参考になった。 また、これまで鳥羽・志摩地域や下田市須崎で調査研究をしてきた海女漁と比較しつつ、近年台湾で見出された海女(ハイルー)の海藻漁の報告書を検討し、議論する場を持った。その成果は、共同で論評した堀内義隆、立川陽仁との共著論文「台湾の『海女』と海藻漁をめぐって」(『三重大史学』23、2023年)として発表した。
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