2021 Fiscal Year Research-status Report
Fundamental research on "camp"in japan
Project/Area Number |
18K00968
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
宮武 正登 佐賀大学, 全学教育機構, 教授 (90745324)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 陣 / 城 / 館 / 城下町 / 合戦 / 古戦場 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究助成事業の第4年度に当たる令和3年度は、新型コロナウィルス感染症の蔓延による現地調査に対する大きな制約が続く中にあって「島原の乱」原城攻囲戦の幕府軍陣場跡(長崎県南島原市)、関ヶ原合戦陣跡群(岐阜県関ケ原町・垂井町・大垣市)、賤ケ岳の合戦時の柴田・羽柴両軍陣跡群(滋賀県長浜市・福井県敦賀市)、備中高松城水攻め時の羽柴・毛利両軍の陣跡群(岡山県岡山市)、美作岩屋城攻撃時の宇喜多軍の攻囲網と付城群(同県津山市)、姉川合戦朝倉軍陣跡と小谷城攻略戦の織田信長本陣・虎御前山陣城(滋賀県長浜市)の踏査を実施し、それぞれに遺構の把握に努めた。 特に「島原の乱」の幕府軍陣跡の全容把握は過去に例がなく、初めて現存遺構の分布状態を解明できたのは大きな成果であった。 戦国史上に著名な姉川・賤ケ岳・関ヶ原などの合戦場に展開する遺構を踏査することで、布陣時に相当規模の滞在用施設を構築していたことが明確になってきたが、これらは中央政権を主体とする覇権争い特有の現象なのか、地方大名の陣の実態との把握を踏まえて比較検証する必要があり、令和2年度からこの点を調査・研究の主課題としていた。令和3年度には薩摩「庄内の乱」時の島津軍陣場跡(宮崎県都城市)、出雲尼子氏の毛利氏郡山城攻囲用陣城群(広島県安芸高田市)などを調査し、島津氏・尼子氏・大内氏の陣城の現存例比較を試みた。その結果、遺構の形状や施設構造に多くの相違点が認められる一方、大規模な土木普請を通じて陣場の造成や堀・土塁の構築などを実施している点は、織豊政権と同質であることが判明した。 なお、当初計画では令和3年度をもって本研究の最終年度とする予定であったが、冒頭で述べた疫禍の影響により現地調査が大幅に遅れたことから1年間の計画延長を申請し、承認を得られたおかげで令和4年度初頭から必要対象の踏査を実施できる運びとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度から続く新型コロナウィルスの疫禍によって、現地調査の延期を余儀なくされたことでの進捗の遅れが生じている。 この研究の主対象である「陣」跡は、各地の山系・森林の中に残存している例が大半であるため、現地踏査による遺構分析を、草枯れが進む晩秋から春にかけて集中的に実施する計画であったのだが、所属大学の防疫指針に従って予定していた時期での県外出張自体が困難となり、本来計画していた調査対象箇所の網羅が追い付いていない。 ただし、計画延長によって遅れの回復の目途がつきそうである。
|
Strategy for Future Research Activity |
計画延長により最終年度となった令和4年4月初頭から、調査内容と対象の見直しを行ったうえで現地調査を開始し、梅雨までにはコロナ禍による調査遅れの挽回を図るよう努力する。 具体的には、川中島合戦における上杉・武田氏の陣跡(長野県各所)、肥後国人一揆の鎮圧豊臣軍の陣跡(熊本県和水町)などを調査し、計画の完結を目指す予定である。 また、疫禍のため延期が続いていた「陣」を主題とする学会(中国・四国地区城館調査検討会)が7月に開催決定となり、これに参加して最新の研究成果・調査データを得て本研究に反映させる予定である。 その後、他県各機関所蔵の文書・記録類などの史料調査データを整理したうえで、研究成果報告書の取りまとめ・作成に入る。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により現地調査に大きな制約が生じ、研究計画に遅れが生じたため、1年間の計画延長を申請し受理された。 延長後の最終年度となった令和4年度には、現地調査の残分の実施(主に旅費)、研究成果報告書作成と印刷(主に物品費・その他)による助成金残額の使用を計画している。
|
Remarks |
以下の公式文化財調査報告書に、当該助成に基づく研究成果の一部を論文発表した。 論文名「新発見の豊臣系陣跡の考察-豊前国人一揆の新たな証左として-」(大分県中津市文化財調査報告第107集『中津市の中近世城館 各節・総括編』同教育委員会 2022年3月31日刊行 p231-p242 査読なし)
|