2023 Fiscal Year Annual Research Report
Japanese political reaction to the East Asia situation of the middle in the 19th century
Project/Area Number |
18K00970
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
松尾 晋一 長崎県立大学, 地域創造学部, 教授 (40453237)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 太平天国 / 唐人社会 / 琉球 / 対馬 / 朝鮮 / 宗家 / 日本 / 日中間貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、コロナ禍で実施できなかった国史編纂委員会(韓国)での対馬宗家文書の調査を実施して、収集した史料の分析を試みた。また本研究の目的は、19世紀中葉に対馬から伝わった清・朝鮮情報が日本に流通していくメカニズムを解明し、その上で幕府・大名家による海外情報の受容と反応を史料から読み解き、「東アジア情勢」対「日本」の構図で日本の政治的反応の展開を検証することにあったので、最終年度としてこの点の検討を行った。 前者については、①宗家が独自のルートを用いてまでも積極的に諜報活動をしていたこと、②宗家は得た情報を選択して江戸屋敷へ伝え、幕府に報告していたこと、③幕府(阿部正弘)は宗家からの情報に即応せず、日米関係の構築によって東アジア情勢への関心が高まったなかで宗家からの情報(太平天国関連)の価値が高まり情報収集に動いたこと、が明らかとなった(「対馬宗家が得た太平天国の戦況情報と日本の対応 」中野等編『中近世九州・西国史研究』(吉川弘文館、2024)。そして④太平天国の戦況が日中間貿易に影響し、従来の関係が維持できなくなったこと、などを解明した(同「太平天国の戦況と長崎―唐人たちの苦難―」(東アジア評論』16、長崎県立大学、2024)。後者については、①対馬宗家は朝鮮・清情報について受け身だったわけではなく、必要に応じて収集活動を積極的に動いていた。そして、②得られた情報を選択して江戸へ伝えたが、幕府はすべての情報に反応したわけではなく、必要に応じて情報の確認、収集に取り組んだ。③その際、長崎を介して情報収集する動きも見せた。つまり別ルートからの情報に期待した。④「東アジア情勢」対「日本」の構図で日本の政治的反応を考えた場合、幕府にしても、大名家にしても偏りのある情報か、複数のチャンネルがあることで検証できる環境にはあり、それを認識して動いていたことが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)