2018 Fiscal Year Research-status Report
Military management during the Chinese Civil War-The case of the Communist Party and the Nationalist Party
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18K00985
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿南 友亮 東北大学, 法学研究科, 教授 (50365003)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中国近代政治史 / 中国内戦 / 中国革命 / 中国人民解放軍 / 中国共産党 / 中国国民党 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国共産党と中国国民党の軍隊建設・軍隊運営を分析するために、2018年度は台湾において国民党関連の史料調査をおこなうとともに、既に入手済みの共産党関連の史料の分析を進めた。 8月に2週間かけて実施した台湾における調査では、中国国民党本部の党史館ならびに国史館において史料収集をおこなった。党史館では、国民党の内部文書をまとめた「特種档案」を重点的に分析した。そこには、日中戦争期において共産党の軍隊が国民党系の軍隊や行政組織に対して繰り返し実施した攻撃の実態や、日中戦争後に再発した国民党と共産党の内戦に対するソ連軍の関与・干渉などに関する興味深い史料が多数含まれていた。台湾滞在中、中央研究院近代史研究所にも赴き、中国内戦の歴史に造詣の深い陳耀煌氏と内戦期の歴史をどのように再解釈し、書き直すべきかについて意見を交わした。 共産党系の史料としては、主として『中国人民解放軍政治工作歴史資料選編』の分析を進めた。その結果、共産党が1945年以降国民党軍の捕虜を大々的に自軍に吸収するための一連の指針・政策を打ち出し、そのための制度を整備し、実際に国民党軍側から投降した部隊や捕虜を自軍に積極的に編入していた実態を浮き彫りにした。内戦の過程で多くの国民党軍部隊が共産党側に寝返ったことは周知の事実であるが、『中国人民解放軍政治工作歴史資料選編』からは、共産党が45年以降の内戦の初期段階から兵士の供給源として国民党軍の兵士を農民と同等かそれ以上に重視していたことが明らかになった。これは、農村の社会改革(「土地革命」)をつうじて農民を軍隊に動員することが共産党の主たる軍隊建設手法であったとする既存の定説を相対化する発見といえる。 以上の研究内容は、論文「中国人民解放軍の形成過程と『中国革命の再評価』」にまとめ、2019年2月に中国現代史研究会が発行した『現代中国研究』42号において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究に着手した当初は、台湾政情の影響で国民党の党史館がきちんと機能するかどうかが微妙で、国民党の内部史料にどこまでアクセスできるか懸念していたが、実際には何の支障もなく党史館で2週間の史料調査を実施することができた。今回、主たる調査対象とした国民党の「特種档案」は、米国のフーバー研究所でも保管されているが、フーバーのものはマイクロフィルムで保存されており、閲覧するのに何かと手間がかかる。一方、国民党の党史館の「特種档案」はデジタル化されており、フーバー研究所よりもはるかに効率的に史料調査を遂行することができた。 また、本研究の研究計画では、もともと初年度に論文を発表する予定はなかったが、中国現代史研究会によって企画された特集の一環として同研究会の『現代中国研究』に本研究の初年度の成果を論文として掲載することができた。 以上の2点に鑑み、本研究は、当初の計画以上に進展していると評価し得る。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、再び台湾を訪問し、国民党の党史館ならびに国史館での史料調査を継続する。中国共産党関連の史料は、既に入手済みのものでまだ本格的に調査していないものが多数あるので、こちらの調査も引き続き進める。
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Research Products
(1 results)