2019 Fiscal Year Research-status Report
Military management during the Chinese Civil War-The case of the Communist Party and the Nationalist Party
Project/Area Number |
18K00985
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿南 友亮 東北大学, 法学研究科, 教授 (50365003)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 中国内戦 / 中国共産党 / 中国国民党 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、7月末から台湾の国民党党史館と国史館での史料調査を2週間実施した。党史館では、昨年度に引き続き「特種档案」の調査をおこなった。その結果、1946年春の中国東北部における四平街と長春をめぐる中国国民党と中国共産党の戦闘にソ連軍が参加していたことに関する機密文書を複数発見した。これまでの通説によれば、ソ連軍は1945年8月に中国東北部において関東軍を武装解除した際に入手した大量の武器弾薬を1946年に中国共産党に提供し、これが共産党の軍隊の戦力向上をもたらした。つまり、ソ連の支援はあくまで武器弾薬の提供に留まるものであったと考えられてきた。今回の党史館での発見は、その通説を覆す可能性を秘めている。 当時の中国には、国民党の支援および国共間の休戦調停のために数万の米軍が駐留していた。このため、もし実際にソ連軍が国共間の戦闘に参加していたのなら、中国東北部に駐留していた米軍部隊もそのことを把握している可能性が高いと考えられた。そこで、科研費とは別の研究助成(サントリー文化財団研究助成「「学問の未来を拓く」)を利用して2020年3月初旬に米国の国立公文書館に赴き、国共の和解に従事していた米軍機関の機密文書を1週間調査したところ、予想通り四平街と長春での戦闘におけるソ連軍の参加という情報を米軍も把握していたことが判明した。米軍は、四平街の戦いで国民党軍の捕虜となったソ連兵の尋問もおこなっていた。 中国内戦とソ連軍の関係の全貌を明らかにするにはロシアの関連文書も含めて今後引き続き調査せねばならないことが多々あるが、2019年度に調査した国民党と米軍の機密文書に鑑みれば、四平街と長春をめぐる戦闘にソ連軍も参加していたことは確定的といえる。このことについて2020年6月に開催されるアジア政経学会春季大会で報告をおこなう予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国共産党と中国国民党の内戦の諸側面について軍隊運営という切り口から分析することを目的とする本研究は、2年目も予定通り海外での史料調査を実施し、おおむね順調に進展したといえる。本研究は、国共間の内戦の勝敗を分けた原因を改めて探ることに主眼を置いているが、ソ連軍の実戦参加という従来の研究では見落とされてきた原因を新たに発見できたことは2019年度の特筆すべき成果であると考えている。そのことに加えて、台湾の調査では、国共の争いの焦点となった他の要因、例えば、塩の流通経路をめぐる両党の熾烈な争いに関する史料も大量に発見した。これは来年度以降の研究材料を確保したという意味で本研究の順調な進展に寄与するものといえよう。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、来年度以降も台湾での史料調査を実施する予定である。ただし、新型コロナウイルスの世界的蔓延により、現時点では研究旅行の計画をたてることすらできない。台湾への渡航が再び可能になるまでの間は、中国、台湾、米国ですでに収集済みの史料を分析することが研究作業の中心となる。
|
Causes of Carryover |
2019年度はもともと台湾での史料調査を夏と春に二度実施する予定であった。夏の調査は無事に実施できたが、2019年末から新型コロナウイルスが流行したことにより、3月中旬・下旬あたりに実施する予定だった春の調査を断念せざるを得なかった。このため、約26万円の繰越金が発生した。 次年度は、この繰越金も活用して台湾で1ヶ月程度の史料調査をおこないたいと考えているが、新型コロナウイルスの状況次第では実施出来ない可能性もある。その場合は、書店経由あるいはオンラインで入手可能な中国国民党、中国共産党、米軍などの史料の購入に活用する予定である。
|