2019 Fiscal Year Research-status Report
壬辰戦争期、明朝から日本に贈られた箚付・冠服類の総合的研究
Project/Area Number |
18K00986
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
新宮 学 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (30162481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 琴 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (20620941)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 明朝 / 壬辰戦争 / 冠服 / 上杉景勝 / 豊臣秀吉 / 兵部箚 / 犀角帯 / 紗帽 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研2年目にあたる2019年度は、7月に京都市の妙法院所蔵の重要文化財「明官服類(文禄五年豊臣秀吉受贈)」の熟覧調査を寄託先の京都国立博物館において研究協力者の山川曉の指導のもとに実施し、米沢上杉神社所蔵の上杉景勝受贈の明冠服と比較研究する貴重な機会となった。同時に科研のメンバー全員の参加による共同研究会、および祇園前祭の会所にて公開中の山鉾懸装品として再利用された明服補子等について調査し、補子のデザインについての理解を深めることができた。 研究代表者の新宮学は、東北史学会大会(東北大学文学研究科開催)にて、「明朝の日本国王冊封上杉景勝に贈られた冠服・兵部箚」と題して公開講演を行い、この間の調査研究の成果を発表した。京都妙法院所蔵の秀吉冠服と上杉神社所蔵の景勝冠服はいずれも国の重要文化財に指定された貴重なもので、とくに秀吉に贈られた頒賜品目録の筆頭に挙げられた「紗帽」と「金箱犀角帯」の2件は、残念なことに現存していないものの、景勝に贈られた冠服類の中にこれらに相当するものが残されている。従って、両者の冠服は国王と陪臣と違いはあるとは言え、相互に補完し合う関係にあることを明らかにした。なお、講演概要は、『歴史』134輯に掲載予定である。 研究協力者の大野晃嗣は、『東洋史研究』78巻2号(2019年)に、論文「明朝と豊臣政権交渉の一齣――明朝兵部発給「箚付」が語るもの――」を公表した。兵部箚に加えられた修正痕を手がかりに、中華帝国から得られるものを最大限に利用しようとする豊臣政権の現実主義的な姿を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上杉神社所蔵の明朝冠服類の一部は、2018年3月に国の重要文化財分割指定を受け、今後の公開に向けて修復作業が現在行われており、熟覧調査の予定が立っていない。 科研の申請の際に当初計画していた中国の博物館等での明服調査は、この間の新型コロナウィルス流行により、中国渡航を見合わせている状況で、当面はネット上で情報収集できる資料や学術論文をもとに研究することを余儀なくされたため、研究の遅れが若干生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
緊急事態宣言の解除を受け、当面は比較的安全な国内での資料調査と文物熟覧を予定している。また2019年10月に大阪城天守閣の特別展「豊臣外交」で公開された兵庫県の龍野神社奉賛会所蔵の明朝官服の例に示されるように、日本国内には壬辰戦争期に明朝より下賜された冠服類が保存されている可能性がある。国内の中近世の文物資料を収蔵する博物館や神社宝物館に対して、書面による調査照会を計画している。
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Causes of Carryover |
2019年3月に予定していた中国の博物館等調査が、新型コロナウィルス流行のために海外渡航を見合わせることを余儀なくされ、旅費の執行ができなかった。次年度も海外渡航は難しいと判断されるので、国内の資料調査と研究資料等の購入を予定している。
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