2020 Fiscal Year Research-status Report
壬辰戦争期、明朝から日本に贈られた箚付・冠服類の総合的研究
Project/Area Number |
18K00986
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
新宮 学 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (30162481)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 琴 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (20620941)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 壬辰戦争 / 冠服 / 上杉景勝 / 豊臣秀吉 / 補子 / 飛魚 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の新宮学は、「明朝の日本国冊封と上杉景勝に贈られた冠服・兵部箚」(『歴史』134輯)において、近年の日明交流史や海域アジア史研究の進展を踏まえて、2000年の旧稿「十六世紀末の日本と中国・朝鮮との講和交渉―米沢上杉神社所蔵の明朝冠服を手掛かりに―」(『西村山地域史の研究』18号)の再検討作業を進めた。景勝の冠服と勅諭の中に明朝から贈られたリスト(目録)の存在する京都妙法院所蔵の豊臣秀吉冠服とを比較検討することで、両者の冠服のうち烏紗帽や犀角帯など相互に補完しあう関係にあることを明らかにした。また壬辰戦争期に4年に及んだ和平交渉の展開に注目して、冊封主体の明朝皇帝と廷臣会議での議論を分析した。この時期に明朝が取った〈許封不許貢〉路線のもとに、勅諭に「原約三事」が明記され、箚付にも対応する内容が記されており、これこそが秀吉の激怒の理由であり、明朝の朝貢貿易体制の明らかな変質を露呈するものであったことを指摘した。 分担研究者の佐藤琴は、科研発足以来の米沢上杉神社や京都国立博物館での明服実見調査をもとに、これまでの研究成果を論文「上杉神社所蔵の明朝冠服の補子について―飛魚か斗牛か―」(『山形大学歴史・地理・人類学論集』22号)にまとめて公表した。2018年の上杉景勝冠服の重要文化財分割指定において、明服が「大紅胸背斗牛円領一領」と新たに命名されたのは、その補子の文様に「翼翅はない」とする説が有力であったからである。これに対し、絵画史を専門とする佐藤の研究では、図像学的研究の視点から分析を加えて、8世紀中国で登場した「紺丹緑紫」と呼ばれる彩色法で1対の翼翅が描かれていることを解明して、あらためて飛魚と結論づけた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染被害が国内外で発生し収束しなかったため、予定していた国内調査・研究会と中国調査を実施できなかった。また、上杉景勝に贈られた冠服のうち烏紗帽や犀角帯などが修復作業に入ったので、熟覧調査を実施できなかった。以上の理由により研究の進捗が遅れることになったため、研究期間の延長を申請し許可された。
|
Strategy for Future Research Activity |
この3月末に上杉景勝の冠服類のうち、烏紗帽・犀角帯・靴の京都での修復作業が終了した。夏以降にこれらを含めた景勝冠服の特別展が予定されているので、その時期に合わせて熟覧調査と研究会の開催を予定している。 また今年も中国調査のリスクが予想されるため、渡航調査に代えて中国の学術誌での研究成果の公表準備を進めている。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染被害が国内外で発生したため、予定していた国内調査・研究会と中国調査を実施できなかった。また、上杉景勝に贈られた冠服のうち烏紗帽や犀角帯などが修復作業に入ったため、熟覧調査を実施できなかった。以上の理由により研究の進捗が遅れることになったため、研究期間の延長を申請し許可された。修復を終えた冠服の特別展示に合わせて今年7月に、熟覧調査と研究会を予定している。
|