2021 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive research on the garments and crowns given to Japan from the Ming dynasty during the Imjin War
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18K00986
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
新宮 学 山形大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (30162481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 琴 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (20620941)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 壬辰戦争 / 明朝 / 上杉景勝 / 冠服 / 補子 / 飛魚文 / 紗帽 / 犀角帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研が採択された2018年度に、たまたま上杉神社所蔵の「明国箚付・明冠服類」が重要文化財に指定された。景勝の冠服類は、1961年「服飾類(伝上杉謙信・上杉景勝所用)」として一括指定されていた。今回改めて歴史資料分野で分割指定されたのは、壬辰戦争(1592~98年)、すなわち豊臣秀吉の朝鮮出兵の停戦期間に日・明間で繰りひろげられた講和交渉の事実を示す貴重な外交関係資料だからである。同様の箚付と冠服は、徳川家康以下の有力大名に50セットほど贈られたとされるが、両者がともに現存するのは、唯一景勝のものだけである。 従来は、日本服飾史の延長上でこの冠服も命名されたが、分割指定では中国服飾史上に位置づけた点は、冠服が冊封に用いられたアイテムであることから評価できる。ただ、近年進展目覚ましい明朝服飾研究を踏まえると、十分な分析がなされたわけではない。 今回の指定では、明服は「大紅刻糸胸背斗牛円領」と新たに命名された。官位を示すゼッケン状の補子の文様には「翼翅はない」とされ、斗牛文と判断された。これに対し、絵画史を専門とする分担研究者佐藤琴の研究では、図像学的研究の視点から分析を加えて、8世紀中国で登場した「紺丹緑紫」と呼ばれる配色法で1対の翼翅が描かれていることを明らかにし、飛魚文と結論付けたことから、再考の余地がある。 研究代表者新宮学は、京都妙法院所蔵の秀吉冠服類と上杉神社所蔵の景勝冠服はいずれも重要文化財に指定され貴重なもので、とくに秀吉に贈られた勅諭の頒賜品目録の筆頭に挙げられた「紗帽」と「金箱犀角帯」の2件は、現存が確認されていない。多数の冠服は明朝使節の「故衣」で数を合わせたとされることから、景勝の冠服類の中に秀吉に相当するものが残されており、両者の冠服類は本来国王と陪臣との違いはあるとはいえ、相互に補完し合う関係にあることを指摘した。
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