2019 Fiscal Year Research-status Report
近現代インドのユダヤ教徒のライフ・ヒストリーと「国民国家」
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18K00988
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井坂 理穂 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (70272490)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インド / ユダヤ教 / 近現代 / 国民国家 / 移動 / 帰属 / ライフ・ヒストリー / マイノリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近現代インドにおけるユダヤ教徒のライフ・ヒストリーの収集・分析を通じて、イギリス支配の解体、インド・パキスタンの独立、イスラエルの建国という流れのなかで、彼らが新たな「国民国家」の成立をどのように受けとめ、いかに対応したのかを分析することを目的としている。インドに長年定着してきたユダヤ教徒コミュニティにとって、インドとイスラエルという国民国家の創設や国民概念をめぐる議論が何を意味したのかを、自伝・回想録・書簡・文学作品、聞き取り調査などをもとに考察する。 2019年度は、イギリス・イスラエルで史資料収集を行うとともに、海外の研究者たちとの情報・意見交換を行った。7月には研究代表者がバンコクで開催されたAAS-in-Asia会議に参加し、戦間期インドのユダヤ教徒コミュニティの帰属意識に関する報告を行った。8月初めに研究代表者・研究協力者間で打ち合わせを行い、8月終わりにイスラエルを訪れてインドから同地に移住したユダヤ教徒、とりわけベネ・イスラエル・コミュニティの出身者やその家族への聞き取り調査を行った。さらにハイファ大学図書館での史資料収集、インドのユダヤ教徒コミュニティについての研究で知られるShalva Weil氏(Hebrew University of Jerusalem)との情報・意見交換などを行った。9月には研究代表者がロンドンで史資料収集を行い、12月にはインドでベネ・イスラエル・コミュニティ出身の作家Esther David氏と情報・意見交換を行った。2020年3月には東京大学・南アジア研究センター主催の国際ワークショップで、研究代表者が植民地期インドのユダヤ教徒のナショナリズム、シオニズムへの関わりについて報告を行う予定であったが、コロナ感染拡大のために同企画は中止となった。この他、比較の観点からインドの他の宗教的マイノリティに関する分析も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イスラエル、イギリスでの史資料収集は順調に進んでおり、イスラエルでのライフ・ヒストリーの聞き取り調査も順調に行われた。また、学会報告や研究交流を通じて、本プロジェクトと関連したテーマを扱う研究者たちとの情報・意見交換も継続的に行っている。論文執筆の作業は予定よりも若干遅れているものの、すでに学会で報告した内容をもとに執筆を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、研究代表者・研究協力者間の打ち合わせを行ったうえで、年度の後半にインドを訪れ、聞き取り調査を行うとともに、成果のとりまとめを視野に入れた補足的な史資料収集を行う。ただし時期や期間については、インドのコロナ感染をめぐる状況を見据えたうえで判断する。7月にウィーンで開催予定であったヨーロッパ南アジア学会については、報告を予定していたものの、コロナ感染をめぐる状況から学会自体が延期されることとなった。また、国内における学会報告や、海外からの研究者を招聘して行う予定であった国際ワークショップの開催についても、コロナ感染をめぐる状況についての見通しがたったところで、改めて対応を検討する。当面は研究代表者、研究協力者のそれぞれが、すでに収集した史資料の分析や、研究論文の執筆などを進める。
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Causes of Carryover |
打ち合わせ会出席のために研究協力者に支払う国内出張費が不要となったことから、若干の残金がでたが、これについては2020年度に成果とりために必要な文献資料の購入にあてる。
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Research Products
(3 results)