2021 Fiscal Year Research-status Report
チャクリー改革における中国的契機―植民地近代の再考と比較史の可能性
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18K00994
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小泉 順子 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (70234672)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チャクリー改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に、アジアで独立を維持した数少ない国の一つであったシャムは、19世紀末から20世紀初頭にかけて植民地化を免れるために、領土の一部を英仏に割譲する一方、領事裁判権撤廃など不平等条約改正を目指して国王を中心に司法、軍事、財政、地方行政、身分制、教育、宗教、王権など広範な近代化政策(チャクリー改革)を進めたとされている。本研究は西洋との関係を基点とする既存のチャクリー改革研究の中で看過されてきたシャム国内の中国人の動きと中国との関係を切り口にチャクリー改革を再検討し、こうした側面が諸分野における改革過程にいかなる影響を及ぼし、その方向性やプロセスを規定したのか明らかにすることを目的としている。 2021年度は、引き続き先行研究の整理と検討を行い、またこれまでタイ国立公文書館等で収集した史料の整理分析を進めた。1855年のバウリング条約締結において、モンクットが王の権威を如何に表現し、またその利益を確保しようとしていたのか、そこに中国との関係はいかに関わっていたのかを検討する論考の執筆を進めつつ、チャクリー改革期のシャムの自立と植民地性をめぐる短文を執筆した。また2021年6月に開催された比較家族史学会2021年春季大会シンポジウム「東アジアはどこまで「儒教社会」か?―チャイナパワーとアジア家族」の総合討論において、ある福建系一族の系譜史料に基づき、18世紀中葉から19世紀半ばにおける華南のマクロリージョン変動、シャムへの移民、シャムの為政者との婚姻ネットワーク形成を関連付けた「シャムの一事例から」と題したコメントを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで収集してきた史料の整理を進めるかたわら、新たな論考の執筆を進めることができたが、その一方でコロナ禍のため、一昨年度末以来延期してきた調査も含めて予定していた海外での史料調査・収集を実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度同様、コロナ感染が収束次第、延期を余儀なくされてきたタイ、イギリスにおける史料調査・収集を実現できるよう、準備を整えておきつつ、代替史料、デジタル史料の活用を積極的に進める。並行してこれまで収集してきた史料の整理・検討を続け、成果を論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のために予定していた海外資料調査ができなくなったため。海外調査が可能になればタイ国立公文書館、およびイギリスNational Archivesで史料収集調査を進める。引き続き代替史料の発掘・収集やデジタル史料の活用を進め、成果をまとめていく。
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Research Products
(2 results)