2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on State Ritual and Capital Cities under the Jin Dynasty
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18K00995
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古松 崇志 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (90314278)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 祭天 / 金国 / 儀礼 / 祖先祭祀 / シャーマニズム / 太廟 / 郊祀 / 南郊 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金代の王朝儀礼のうち、祭天儀礼、祖先祭祀儀礼、元日・聖節(皇帝の誕生日)の祝賀儀礼などをとりあげ、各種儀礼の沿革や儀式次第を詳細に分析するとともに、考古学の成果を参照して儀礼制度を都城空間のなかで検討することをつうじ、金国の王権や支配体制の特質を実証的に再検討することを目指すものである。 本年度は、前年度までに蓄積してきた金国における祭天儀礼と祖先祭祀にかんする調査・研究を完了した。祭天については、女真の伝統にもとづく拝天礼と中原王朝の儒教式の儀礼郊祀の二種類があったが、中央ユーラシアの狩猟遊牧民の祭天儀礼と共通性をもつ拝天については、建国から滅亡まで一貫して年中行事として年々途切れることなく行われた。南郊郊祀については、ようやく第五代皇帝世宗が初めて皇帝親祭を挙行したが、その祭祀方式を精査すると、四層から成る壇制や天地合祭など北宋前半の制度によっており、神宗・徽宗の北宋新法政権が推進した郊祀制度改革は意図的に忌避していたことが明らかとなった。ただし、南郊郊祀の皇帝親祭は金代をつうじてわずか3回だったことにくわえ、郊祀の導入も部分的水準にとどまり、金国にとっては地方政府でも定制化した拝天こそが最重要の祭天儀礼だった。また、祖先祭祀については、先帝の御容(肖像)をまつる原廟が建国当初から重視されたことに契丹からの影響がうかがえるほか、太廟での祭祀対象は始祖函普にまで遡り、金国の中核部族である按出虎水完顔部のみならず初期から協力した女真集団を始祖の子孫として宗室に組み込む制度を反映し、モデルとした中原王朝の太廟とは異なる独自性の強いものであったことが明らかとなった。この独自の宗廟制度は、金国の政権中枢の成り立ちを反映しておりきわめて重要な意味を持ち、阿骨打の建国以前に関する歴史編纂とも密接にかかわるものであった。
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Research Products
(3 results)