2022 Fiscal Year Annual Research Report
A historical research on the procurement and trade of marine products from South Asia in the early modern era
Project/Area Number |
18K00998
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
和田 郁子 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (80600717)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アジア海域史 / 南アジア史 / オランダ東インド会社 / コロマンデル海岸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、近世日本で主に刀装の素材として用いられた熱帯アジア産の鮫皮について、その重要な産地であった南インド・コロマンデル海岸から主要消費地たる日本に至るまでの調達過程を明らかにすることを目指したものである。2022年度は研究成果の取りまとめに重点を置き、これまでの研究活動のなかで収集したデータの整理分析を行い、論文執筆に取り組んだ。この論文については22年度に学術雑誌に投稿しており、23年度に発表される運びである。 期間全体を通してみると、2年目の終わりに始まった新型コロナウィルス禍による様々な制限のため、予定していた海外での資料調査を断念せざるを得なくなるなど、研究実施期間を延長してもなお当初計画の変更を余儀なくされることが続いた。しかし他方で、主にオランダ国立文書館の所蔵資料の電子化とWeb上での公開が進んだおかげで、本研究における最重要史料群であるオランダ東インド会社文書については、国内からでも関連情報の調査を進めることができた。最終年度に執筆した論文では、これらのオランダ語史料と日本関係の情報の分析を核として、オランダ東インド会社が17-18世紀を通じて日本にもたらしたコロマンデル近海産の鮫皮は、基本的にその沿岸の主要な商館に集められ、そこからバタフィア経由で日本へ送られていたこと、逆に日本のオランダ商館からバタフィア経由で鮫皮調達に関する要望がコロマンデル海岸の諸商館に伝えられるという双方向の連絡が見られたことを具体例を示しつつ明らかにした。さらに、17世紀後半のオランダ東インド会社と現地の政治権力者や商人との間で結ばれた合意や契約の分析を通して、現地の政治情勢や社会状況を踏まえた各勢力間の関係性を詳にし、その変化が鮫皮調達に与えた影響について考察を加えた。
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