2019 Fiscal Year Research-status Report
Documents in Tang and Song China
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18K01000
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
遠藤 隆俊 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (00261561)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 円仁 / 入唐求法巡礼行記 / 文書 / 状 / 牒 / 山東 / 長安 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、唐代末期に遣唐使に付随する僧侶として中国を訪問した円仁の日記『入唐求法巡礼行記』を資料として文書を調査した。この日記には、円仁が書き残した公文書55件が掲載、収録されている。これら55件の文書の内訳は、状式文書が25件、帖式文書が7件、牒式文書が16件、勅式文書が1件、施舎疏文書が3件、答書が2件、覆問書が1件である。これらは唐代末期における文書研究の重要な資料である。 25件の状式文書はすべて円仁から官庁へ送られた上行文書であるが、その用途や内容によって、5つの種類に分類した。1つは申状であり、自分たちの来歴や出身を報告した文書である。2つめは挨拶状で、円仁たちが官庁で謁見したときに上申した文書である。3つめは感謝状であり、官庁から賜物をいただいたときに出した文書である。4つめは懇請状で、食事や金品の援助を求める文書である。5つめは奉献状であり、円仁たちが住んでいる寺院に対して、財物などを献上したときに上申した文書である。 さらに、本年度の研究では、以上の文書55件を、円仁の入唐、滞在時期及び場所ごとに分類して、一覧表にまとめた。第一期は杭州、台州時期の文書4件、第二期は山東時期の文書28件、第三期は長安時期の文書23件である。第一の時期は、円仁が中国に入ったばかりの頃の文書で、まだ数が少ない。第二期の文書は円仁が帰国の船から下船し、巡礼を継続しようと決意した時の文書群である。第三期の文書群は、巡礼がかなって、長安にたどり着いて以降の文書群である。 今後はこれら3つの時期の文書群について、詳しく内容を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、最初の2年間で宋代における入宋僧である成尋『参天台五台山記』に見える文書を収録、記載し、次の2年間で、円仁『入唐求法巡礼行記』に見える文書、そして最後の1年間で円珍『行歴抄』に見える文書を採録、収集する予定であった。しかし、2年目の前年度に円仁『入唐求法巡礼行記』の研究に進むことができたのは、少し進捗が早いと言える。ただ、文書の具体的な考察があまり進んではいないので、全体としては概ね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画から変更した点は特になく、前記のように研究は概ね順調に進んでいる。したがって、当初の計画通り、今後も成尋、円仁、円珍の各日記を資料として、文書を採録、分析することとしたい。ただ、新型コロナウイルス拡大の影響で、外国とくに中国や台湾に行って調査、研究、打合せ等ができなくなっており、そこが課題ないし懸念材料である。
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Causes of Carryover |
2020年3月に、東京大学等における資料調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、出張ができなくなってしまった。その結果、当初予定していた資料整理などの謝金についても執行ができなくなり、次年度使用額が生じた次第である。次年度、新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、各都道府県間の往来が回復するようになれば、改めて調査に出かけることにしたい。どうしても解除されない場合には、先行して書籍文献の購入費に充当する予定である。
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Research Products
(4 results)