2021 Fiscal Year Research-status Report
19 世紀中国の封建国家論と地方分権をめぐる研究―太平天国と督撫重権を中心に―
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18K01002
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
菊池 秀明 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (20257588)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 督撫重権 / 太平天国 / 聯省自治 / 湘軍 / 曽国藩 / 李鴻章 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は主としてこれまでの研究成果をまとめ、著書として出版するための原稿執筆に取り組んだ。タイトルは『越境と動乱の中国史』で、17世紀~19世紀後半までの南中国における移住と民族関係の歴史を軸に、地方分権体制の可能性とその挫折について考察したものである。 本研究課題と強く関連するのは、19世紀半ばに広東で発生した住民間の地域紛争である土客械闘について考察した部分である。湖南の地方軍事勢力である湘軍が関係するこの歴史を再検討するために、これまで整理、分析してきた史料を活用した。また19世紀後半に行われた近代化事業である洋務運動との関連で、台湾における地方エリートの台頭と淮軍系の官僚である劉銘傳について調査を行った。 著書のための原稿執筆とは別に、コロナウイルスが社会に与えた影響を歴史的に考察するために、「中国史のなかの「病気」と戦争・信仰」というタイトルで試論を執筆した。また『ラストエンペラーと近代中国 中国の歴史10』講談社、2005年の文庫化にあたって内容を大幅に見直し、加筆を行ったうえで出版した。 さらに清末の地方軍事勢力の一つである苗沛霖に関する中国大陸、台湾所蔵の档案史料を整理し、読解を進めた。この研究を円滑に進めるため、従来収集してきた整理し、PDF化する作業を集中的に行った。 当初研究課題を深化するために計画していた中国での調査は今年も実現しなかった。これは日本側の制約よりも、中国とくに上海でのロックダウンを初めとする感染の流行が大きく影響した。政治的な締め付けもあって、中国での調査はなお難しいと思われるが、次年度は可能な限り台湾、香港での調査を実現させたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画していた中国での調査が今年も実現しなかったことが最大の理由である。2020年度は日本側の制約によって出国が出来なかったが、2021年度後半は中国とくに上海でのロックダウンを初めとする感染の流行が大きく影響した。また現在中国では政治的な締め付けも厳しく、史料の公開が以前に比べて後退しているため中国での調査はなお難しいと思われる。次年度は可能な限り台湾、香港での調査を実現させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は可能な限り台湾、香港での調査を実現させたいと考えている。またすでに収集した史料の有効活用に重点を移し、引き続き史料の整理とPDF化を進めたい。これらの史料は中国大陸と台湾で所有権を争っているものを含んでおり、安易に公開することは危険を伴うので、これをデーターベース化するかどうかについては慎重に判断したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度もコロナの影響で海外での調査が出来ず、予定していた史料収集ができなかったため次年度使用額が生じた。次年度はすでに収集した史料の整理と分析、とくにPDF化によって活用可能な状態にすることに重点をおき、最終年度の成果を出すことに努力する。
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