2018 Fiscal Year Research-status Report
The political relationship between Qing, Tibet and Nepal in the nineteenth century
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18K01006
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小松原 ゆり 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (40782793)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 清朝 / チベット / ネパール / グルカ / 朝貢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、18世紀末に開始されたネパールの朝貢とチベットの関係に注目しながら、1856年にチベット・ネパール間で勃発したグルカ戦争を手がかりに、満洲語・漢語・チベット語・ネパール語などの多言語史料を用いて、19世紀における清・チベット・ネパール間の政治的関係の実態を明らかにすることを目的とする。 初年度にあたる平成30年度は、18世紀末から19世紀末まで続いたネパールの対清朝貢の全体像を把握する一環として、まず18世紀末のチベットの年班・ネパールの朝貢および清朝の対応について、既刊行史料を整理し再検討を行った。その結果、ネパールの朝貢使節の派遣は必ずチベットを経由して行われており、駐蔵大臣の采配が両国関係の鍵となることが明らかになった。ネパールの象の朝貢の遍歴については、第4回清朝与内亜国際学術討論会(中国・長春)において口頭発表を行った。18世紀末ネパールの朝貢の有り方と清朝の対応については、論文「グルカの貢象と清朝の対応について―乾隆57年・60年の朝貢を例に―」(『駿台史学』第159号、2017年)の内容に加筆・修正し、Meiji Online Studiesにおいて発表した。また、チベット・清朝関係については、チベットが年班の際に贈ったテンシュクという皇帝の長寿祈願を意味する書に注目し、テンシュクが本来の宗教的意味合いを含みながらも年賀の挨拶状的な存在であったことを明らかにした。18世紀末チベットのテンシュクに対する清朝の返礼品およびその特徴について、論文「チベットの年班のテンシュクと清朝からの返礼品」(『明大アジア史論集』第23号)にまとめ、2019年3月のアジア史料学研究所シンポジウムにて「テンシュクを通じた清・チベット関係」を口頭発表した。年度末には、中国第一歴史档案館において満洲語・漢語・チベット語・ネパール語档案史料の調査・収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
チベットの年班およびネパール朝貢の様相と清朝の対応の解明という点では十分な成果があったが、未公刊史料の調査・収集という点については、進捗状況にやや遅れが出ている。これは既刊の档案史料の読解・分析に注力したため、海外での史料調査を十分に行うことができなかったことに起因する。よって平成31年度(令和元年度)においては、中国第一歴史档案館、台湾の故宮博物院、ネパール・カトマンドゥの各地において、未刊行の一次史料の調査・収集・整理を行う予定である。また、清・チベット・ネパール関係に関する文物の調査も行うつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度(令和元年度)の調査研究では、前年度の成果を踏まえながら、19世紀前半のネパールの朝貢に関する史料調査・収集を国内外で実施する。第一に、中国第一歴史档案館に所蔵される档案史料の調査・収集をさらに進め、ネパール語書簡についても調査を行う。第二に、台湾・故宮博物院所蔵の清朝の档案史料の調査・収集を行う。これらの档案史料と『清代西蔵地方档案文献選編』に収録されているチベット語史料の内容と比較分析を行い、朝貢を通じた清・チベット・ネパール関係の推移を検証し、1856年グルカ戦争の背景を知る手がかりとする。第三に、ネパール・カトマンドゥを訪問し、清・チベット・ネパール関係に関連する文物調査を行い、19世紀前半の三者関係の様相について多角的に検証する。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、既に公刊されている史料の読解・分析に力を注いだため、中国およびネパールにおける現地調査が実行できず、旅費に余りが生じた。また、関連図書の購入が少なかったことも、物品費に余りが生じた理由である。平成31年度(令和元年度)は、中国やネパールにおける現地調査や、中国とフランスで開催される国際学会での口頭発表のために旅費を使用する。また、文物調査および現地での関連書籍の購入として物品費を充当し、口頭発表・論文投稿における外国語校正の費用を使用する予定である。
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