2019 Fiscal Year Research-status Report
The political relationship between Qing, Tibet and Nepal in the nineteenth century
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18K01006
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小松原 ゆり 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (40782793)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 清朝 / チベット / ネパール / グルカ / 档案 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目である令和元(平成31)年度は、海外における史料収集・現地調査と、昨年度の調査内容を踏まえた口頭発表を中心に行った。 まず3月30日~4月7日にかけて、中国・北京の中国第一歴史档案館を訪問し、18世紀後半から19世紀前半にかけての清・チベット・ネパールの三者外交に関する満洲語・漢語档案史料(未刊行)の調査・収集およびチベット語・ネパール語文書史料の調査を行った。加えて、台湾・故宮博物院HP内の図書文献處資料庫を利用して、19世紀前半の漢語档案史料(未刊行)の収集を行い、これらの史料を整理して、読解・分析を進めた。7月7~13日には、パリ・フランス国立東洋言語文化学院(INALCO)で開催されたInternational Association for Tibetan Studies 15th Seminar(第15回国際チベット学会)に参加し、17世紀から現代までのチベットの戦争に関する報告パネル”Tibetan Army”において、18世紀後半のチベット・清朝対ネパール(グルカ朝)戦争時におけるチベット内政と対外政策に関する口頭発表を行った。11月22日~24日には、中国・北京で開催された13-20世紀中央欧亜歴史与文化国際学術研討会(中央民族大学歴史文化学院主催)に参加し、18世紀末から19世紀にかけての清・チベット間の定期的外交に関する口頭発表(清代西蔵的年班丹書克)を行った。 翌2020年2月14日~3月4日には、ネパールのカトマンズ盆地およびチベットとの国境地域(ラスワ地方)において、歴史文物・史跡調査および史料収集を行った。1790年および1856年のチベット・ネパール戦争に関する史跡を訪問し聞き取り調査を行った結果、従来の研究では未判明であった地名および進軍ルートを確定することができた。同時に、19世紀のラスワ地域の藩王支配とネパール・グルカ王朝の支配範囲拡大に、19世紀半ばのチベット対ネパール戦争が大きく関与していた事実を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、予定していた中国・北京およびネパールにおける史料調査および文物調査を実現し、成果を得ることができた。台湾に関しては、国立故宮博物院HP内の図書文献處資料庫を利用し、インターネット利用が可能な档案史料の収集を行った。同時に、国際学会(パリ、北京)において前年度の成果を踏まえた口頭発表を行うことができ、研究はおおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成2年度は、海外における史料調査および口頭発表が難しいことが予測されるため、前年度の調査で得た成果の整理と文章化および国内研究機関所蔵の史料および既刊史料の収集・読解に重点を置く。 第一に、前年度の調査で得た成果をまとめ、口頭発表および論文化する。第二に、前年度に収集したチベット語文書史料の読解を引き続き行い、関連する満洲語・漢語档案史料と合わせて分析を進める。第三に、台湾・故宮博物院HP内図書文献處資料庫から1856年のチベット対ネパール戦争に関する档案史料(未刊行)を収集し、前年度のネパール現地調査で得た成果と合わせて、文献史料とフィールド調査の両面から該戦争の検証を行う。さらに、先方の受け入れが可能になり次第、中国・北京の第一歴史档案館および台湾の国立故宮博物院・各研究機関を訪問し、関連史料の調査・収集を行う予定である。
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Causes of Carryover |
令和元(平成31)年度は、台湾を訪問した史料調査を行わなかったこと、関連書籍の購入が少なかったこと、プリンターの購入を行わなかったことが、使用額に余りが生じた主な理由である。平成2年度は、プリンター等パソコン周辺機器および関連書籍の購入として物品費を充当し、可能であれば中国や台湾での現地調査および国内学会への参加のため旅費を使用する予定である。
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