2021 Fiscal Year Research-status Report
The political relationship between Qing, Tibet and Nepal in the nineteenth century
Project/Area Number |
18K01006
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小松原 ゆり 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (40782793)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | チベット / ネパール / ラスワ / 清朝 / チベット・ネパール戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
4年目である令和3年度は、引き続きコロナ禍によって海外での調査・史料収集が不可能であったため、主に国内で入手可能な史料の収集と分析を行った。同時に、令和2年2月から3月にかけてにネパール・カトマンズ盆地およびラスワ地域で行った現地調査で得た成果を整理・発展させ、シンポジウムの開催・学会やシンポジウムにおける口頭発表を行った。主な内容は以下の四点である。 第一に、上記のネパール現地調査で得た成果をもとに作成した論文「第二次グルカ戦争における清朝軍のネパール入境後進軍ルートについて」が、『日本西蔵学会々報』(令和4年3月発行)に掲載された。第二に、現地調査をさらに発展させ、歴史学・人類学・言語学など各分野の研究者とともに、チベットからネパール北部・ラスワ地区を経てカトマンズ盆地へと続くヒマラヤ交易路に焦点を当てたシンポジウム「『みんな、ここを通った』―戦争・交易・巡礼から見るヒマラヤ交易路の盛衰史」を開催した(令和4年2月)。このシンポジウムでは、企画責任者として参加すると同時に、口頭報告「戦争とヒマラヤ交易路:チベット、ネパール、清朝関係を中心に―」を行なった。第三に、18世紀のチベット・ネパール・清朝関係について、京大人文研アカデミー「ヒマラヤ世界のウチとソト:受容と交流のチベット史」(令和3年4月)において報告「18世紀:チベットを中心とした国際関係」、明治大学アジア史料学研究所シンポジウムにおいて報告「チベットの摂政をめぐる清朝の対チベット政策―十八世紀後半の摂政ガワンツルティムを例に―」など、チベット政治・国際関係に関する口頭報告を行なった。第四として、前年度に引き続き、主に台湾・故宮博物院HP内の図書文献處資料庫から、19世紀前半から半ば過ぎにかけてのチベット・ネパール関係の档案史料の収集と整理を行い、1856年のチベット対ネパール(グルカ朝)戦争に関する分析を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度もコロナ禍のため海外での調査・史料収集は不可能であったが、前年度に引き続き、これまでに収集した史料および台湾・故宮博物院HP内の図書文献處資料庫などインターネットを通じて新たに収集した史料の整理と分析・読解を腰を据えて行うことができた。加えて、これまで注目してきた18世紀後半のチベット政治および国際関係についても新たな考察を加え、口頭発表を行なった。なかでも大きな成果としては、令和2年のネパール現地調査に基づいた論文が雑誌に掲載され、その成果を発展させた多角的な視座によるシンポジウムを開催したことで、今後の展開がより明確になったため、研究はおおむね順調に進展しているということができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和4年度も、引き続き海外における史料調査が難しいことが予測されるため、これまでに集めた档案史料の読解と、インターネットを活用して新たな史料の収集および研究成果の論文化・口頭発表を中心に進めて行く。 第一に、18世紀後半と19世紀前半のチベット政治について摂政を中心に比較検証を行い、7月にチェコで開催される国際チベット学会(IATS)で報告する予定である。また、受け入れが可能になり次第、中国・第一歴史档案館と台湾・国立故宮博物院などの各研究機関を訪問し、関連史料の調査・収集を行う予定である。 第二に、1856年のチベット対ネパール(グルカ朝)戦争について、前年度に引き続き18世紀末の対ネパール戦争との相違に注目しながら考察し、論文にまとめて投稿する。 第三に、令和4年2月に開催したチベット・ネパール間の交易路に関するシンポジウムで得た多角的な視座をさらに発展させるべく、同地域を扱う様々な分野の研究者との研究会を開催する。それと同時に、1856年の戦争が19世紀のヒマラヤ交易路そしてネパール・ラスワ地域の藩王支配とグルカ朝の支配範囲拡大の関係に与えた影響について、さらなる考察を加えていきたい。
|
Causes of Carryover |
令和3年度は、海外での調査・史料収集や学会参加ができなかったことで、主に旅費の未使用が生じたことが、使用額に余りが生じた主な理由である。平成4年度は、7月にチェコで開催される国際チベット学会および国内学会への参加のために旅費を使用する。中国、台湾、ネパールでの史料調査・収集が可能になった際には、こちらにも旅費として使用する予定である。また、カラープリンター、デジタルカメラおよび輸入・国内書籍や史料集の購入のために物品費を充当する。
|