2023 Fiscal Year Research-status Report
The political relationship between Qing, Tibet and Nepal in the nineteenth century
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18K01006
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
小松原 ゆり 明治大学, 研究・知財戦略機構(駿河台), 研究推進員 (40782793)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 清朝 / チベット / ネパール / 档案 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、前年度に引き続き主に国内で入手可能な史料の収集・読解・分析および学会シンポジウムにおける口頭発表、論文発表を行った。主な内容は以下の通りである。 第一に、引き続き台湾・故宮博物院HP内の図書文献處資料庫を中心に、出版された満州語・漢語・チベット語の档案資料集も含めて、18世紀後半から19世紀半ば過ぎにかけての清・チベット・ネパール関係の歴史档案史料を収集し、その整理と読解を行った。同時に、伝記などのチベット語文献や英語文献の解読を進めたことで、19世紀中葉のチベット・ネパール戦争の経緯を、清・チベット・ネパールそれぞれの視点からまとめることができた。その結果、18世紀末から19世紀前半にかけての清・チベット・ネパールの各二者関係および三者関係の推移のみならず、同時期のチベット政界の権力構造の変容についても、新たな分析を加えることができた。 第二に、令和5年8月22日に開催された明清史合宿シンポジウム「〈大清〉の時代―満洲(マンジュ)の支配とは何だったか」(於東京大学本郷キャンパス)において、清朝の対チベット政策の推移に関する報告を行った。 第三に、同年12月16日に開催されたシンポジウム「内陸アジアの高地文化に触れてみる」(於鶴見大学)において、朝貢を通じた清・チベット・ネパール三者の政治的関係を報告した。 第四に、関連する档案史料を読解するなかで、清朝皇帝・官僚間でやりとりされる公文書で使用される「ことば」の使い分けに着目し、論文「乾隆帝と地震」にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度もコロナ禍の余波で海外における現地調査・史料収集は実現しなかったが、前年度に引き続き漢語・満洲語の歴史档案史料を中心に内容の分析・読解を進めた。その際に、18世紀後半から19世紀にかけての清・チベット・ネパール政治的関係の推移を再検証して報告を行なったことで、同時期の三者の関係により理解を深めることができた。また、清朝の公文書で使用される「ことば」の問題についても更なる見解を加えたことで、研究に新たな見地を広げることができた成果は大きい。しかし、海外での現地調査や史料収集が叶わなかったため、チベット・ネパール戦争について論文にまとめるまでには至らなかった。よって、進捗状況はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の余波で海外での現地調査・史料収集が実現せず十分な成果を得ることができなかったため、翌年度への再延長を希望し承認を受けた。令和6年度は、北京・中国第一歴史档案館で満州語・チベット語史料の調査・収集を行い、これまでの研究成果と合わせて論文化・口頭発表を行う。さらにネパール・カトマンズおよびその周辺地域を訪問してヒマラヤ交易路に関する文物調査を行い、文献史料とフィールド調査を融合した研究成果を提示する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の余波で海外における現地調査・史料収集が実現せず、主に旅費が残ったため。今年度は、以下の二ヶ所での現地調査を計画している。第一に、中国・北京の中国第一歴史档案館で満州語・チベット語史料の調査・収集を行う。第二に、ネパール・カトマンズおよびその周辺地域を訪問して、ヒマラヤ交易路に関する文物調査を行う。
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