2022 Fiscal Year Research-status Report
The 1923 Constitution and Constitutionalism
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18K01010
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
池田 美佐子 名古屋商科大学, 国際学部, 教授 (80321024)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 憲法 / 立憲主義 / 民族主義 / 独立 / エジプト / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究成果は3点である。まずは、前年度に国際ジャーナルのInternational Journal of Asian Studies(Cambridge University Press)に投稿して条件付きで採択された論文"Independence and Constitutionalism in Egypt 1919-1922"の修正作業を行い、最終的に同ジャーナルのオンライン上に出版された。(https://doi.org/10.1017/S1479591422000213)。同論文では、これまでの研究でエジプト独立の過程において注目されてこなかったエジプト立憲主義に注目し、独立に向けたイギリスとの政治交渉のなかで、エジプト立憲主義者が憲法制定をめざすために巧みに交渉を行ったことを明らかにした。 2点めの研究成果は上記の出版論文の延長線上にある研究の開始である。新しい研究では、立憲主義の原則の具現化に尽力する立憲派と国王権力の維持をもくろむ国王派の軋轢の中で、独立後の憲法上の議会と国王の権力分有に関して、どのような政治的経緯によって、最終的にどのような憲法上の決定なされたかを明らかにする。当該年度においては、英語およびアラビア語の二次文献で既存の議論を明らかにした。 3点めは、本研究の中心的史料となる1923年エジプト憲法の翻訳を、公益財団法人・東洋文庫研究所のリポジトリ上に出版するための最終作業を他の二人の研究者とともに行ったことである。同憲法を正しく日本語で理解することは、本研究にとって不可欠である。リポジトリ上の出版は次年度となるが、ゲラの校正作業以外は当該年度で終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では資料収集が不可欠となるが、当該年度もコロナ禍のため、エジプトへの資料収集だけでなく国内での資料収集も思い通りにできなかった。さらに、研究実績の欄に記載したInternational Journal of Asian Studiesに投稿して条件付きで採択されていた論文"Independence and Constitutionalism in Egypt 1919-1922"の修正作業において、資料の読み直しなどのため予定よりも多くの時間を費やしたため、新しい研究への着手が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
1923年憲法の制定過程における議会と国王の権力分有についての研究では、サルワト政権下の憲法制定委員会、ナスィーム政権下の法制諮問委員会、およびイブラヒーム政権下における憲法の最終案の決定の3つの段階における権力分有の議論を明らかにする。 史料は後述の『al-Dustur』などの議事録、補足的に新聞雑誌の記事等も用いる。 同研究に必要な史料を入手するためのエジプト出張は、エジプト国内におけるパンデミックの状況を注視して決定する。国内出張については、東京大学東洋文化研究所に所蔵されている『al-Dustur』の閲覧のため複数回実施する予定である。今年度中に論文の執筆を始め、さらに東洋文庫の研究会において口頭発表を行う。
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Causes of Carryover |
パンデミックが終結していないため、エジプトでの資料収集を見合わせた。 今年度の使用計画に関しては、エジプトでの資料収集はエジプトのパンデミックの状況を考慮し、可能であれば実施する。しかし、今年度に使用可能な予算は限られているため、出張は国内における資料収集のみとなる可能性もある。
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