2023 Fiscal Year Annual Research Report
The 1923 Constitution and Constitutionalism
Project/Area Number |
18K01010
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
池田 美佐子 名古屋商科大学, 国際学部, 教授 (80321024)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エジプト / 立憲主義 / エジプト1923年憲法 / 民族主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の研究成果は4点である。第一に、前年度に国際研究雑誌のInternational Journal of Asian Studies(Cambridge University Press)のオンライン版に掲載された論文"Independence and Constitutionalism in Egypt 1919-1922"が最終的に同雑誌の冊子で出版された。(vol. 20, Issue 2, July 2023, pp.385-401)第二に、本研究における主要な史料である1923年エジプト憲法の翻訳を完成させ、公益財団法人・東洋文庫研究所のリポジトリ上に出版した。立憲王制期のエジプト立憲主義の性格を理解する上で同憲法を細部にわたって検討することは必須で、日本語への翻訳を通してそれがさらに可能となった。なお、この翻訳作業は他の二人の研究者の協力のもとに行った。第三の成果は、2011年のアラブの春に至るまでのより長期的視野に立って本研究の成果をまとめた論文「エジプトと「民主主義」―議会・憲法・革命の歴史から」を執筆したことである。これによって1923年憲法へのエジプト立憲主義の道のりと同憲法のその後の影響や位置付けを俯瞰することができた。同論文は、大稔哲也編著『アラブの春のアクチュアリティー』)に収録され、2024年に山川出版社から出版される予定である。最後は、1923年憲法の制定過程を立憲主義の原則の具現化に尽力する立憲派と国王権力の維持をもくろむ国王派のせめぎあいを軸として分析を試みたことである。これは研究期間内に論文としてまとめることができず、今後の課題として残った。 本科研研究全体を通しての成果としては、エジプト立憲主義は1870年代から本格化する民族運動と連動し、紆余曲折の中でその実現に向けて粘り強く歩みを進めてきこと、そして、最終的に1922年の「独立」と1923年憲法の制定に結実したことを検証できたことである。
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