2018 Fiscal Year Research-status Report
拓本精査と画像アーカイブ化による突厥碑文の歴史学的研究
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18K01017
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
鈴木 宏節 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 助教 (10609374)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 突厥碑文 / 突厥 / 突厥文字 / モンゴル / トルコ / 遊牧民 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の初年ということで、先ずは国立国会図書館(東京都千代田区)所蔵の突厥碑文・ビルゲ=カガン碑文の拓本を調査した。近年刊行の先行研究の指摘通り、8世紀前半、古代トルコ遊牧民の国家「突厥」によって建立された碑文の拓本であり、国内の他機関にはまったく所蔵されていない希少性の高い史料であることが確認された。国外においてもサンクトペテルブルク東洋写本研究所(ロシア共和国)以外の所蔵は報告されておらず、研究計画通り、本碑文の拓本は最も電子資料化が望ましいものである。そこで、同図書館員と協議し、次年度以降の作業の大枠を策定することとなった。 次に、広島大学(広島県東広島市)を訪問し、キョル=テギン碑文の拓本を調査した。拓本を良好な状態で保存するとともに公開することは、所蔵先である文学研究科の東洋史研究室としても懸案であるという。来年度に所蔵拓本の状態を文化財保存業者(業者については目下選定作業中)に点検してもらい、今後の所蔵環境を整えるべく、あわせて電子画像を公開できるよう、具体案を模索している。 以上が国内所蔵拓本へのアプローチであったが、個人所有の拓本についてもアーカイブ作業に進展があった。すなわち、過去の科研費によりモンゴル国バヤンホンゴル郡で採拓したヒルギシーンオボー碑文の拓本の裏打ちをおこない、写真撮影をした上で電子情報化を終えた。そして、碑文の建立背景について内陸アジア史学会大会で口頭報告をおこなった。同碑は断片的なこともあり、テキスト解釈をめぐって、さらに立碑目的について議論がかわされた。これを踏まえて次年度は論文を執筆し、あわせて碑文拓本の画像を公開する準備をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述のビルゲ=カガン碑文の拓本は、セットで収蔵されたもののひとつであった。従って、当該拓本以外の複数の拓本をどう扱うかが解決すべき課題となった。個別一点ものの拓本として処理するのか、中国史関係ないしモンゴル関係の拓本群として扱うのか、その点について具体案を提示しなければならない。予算も時間も限られることであるので、点数を絞り込まねばならないが、データベース化の際にどのようなキャプションを付けるかも問題になってくる。それは、広島大学の拓本群についても同様である。今後、九州大学や京都大学、立命館大学の所蔵拓本でも注意すべき点である。 以上、拓本の実見調査とともに文化財保存という観点からアーカイブ化には慎重な手続きが必要であることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
二年次には、初年度の進捗状況を踏まえ、国内の拓本所蔵機関を訪問する際には、予め解決すべき問題をモジュール化して、効率よく手続きと対策を進められるようにしたい。具体的には、九州大学(福岡県)と広島大学の拓本について、電子情報化を目指している。特に九州大学については、図書館が移転しており、貴重書保存に関しての原則が変更されているおそれがある。初年度の課題を踏まえ、効率よく情報収集ならびに公開の手順を踏めるように工夫したい。それに関しては、初年度から接触することができた広島大学所蔵拓本の保存・撮影作業を先行して進める必要があろう。いずれにせよ、これらはキョル=テギン碑文についてであるが、国立国会図書館に所蔵のビルゲ=カガン碑文についても精査をする予定である。 ところで、所属研究機関を関東から関西に移しているために、初年次に集中するつもりであったが後回しにした大阪大学(大阪府豊中市)所蔵拓本の調査を前半期から進めてゆく。 なお、ヒルギシーンオボー碑文については研究論文を完成させ国内の審査制ジャーナルに投稿する。初年度の学会報告のなかで、碑文テキストの文体について指摘をうけた。すなわち、古代トルコ遊牧民の文献史料の重要なポイントである、一人称碑文であるか三人称碑文であるかの議論を避けて通ることはできない。実は、本科研計画で主要研究対象にしている碑文は一人称が多用されている。一方で、ヒルギシーンオボー碑文は三人称であった。従って、本年のアーカイブ化作業とともに、碑文の語り方というテキスト材料が提供されることが期待されている。古代トルコ語史料は僅少ではあるが、それだけに、複数の史料群を複合的に検討する必要がある。
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