2020 Fiscal Year Research-status Report
拓本精査と画像アーカイブ化による突厥碑文の歴史学的研究
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18K01017
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 宏節 神戸女子大学, 文学部, 准教授 (10609374)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 突厥 / 突厥碑文 / 突厥文字 / モンゴル / トルコ / テュルク / 拓本 / 遊牧民 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は年度初頭より新型コロナウイルスの感染拡大、ならびに緊急事態宣言の相継ぐ発令に見舞われた。それにより研究活動の制限を受け、対外的な研究調査活動をほとんど実施することができなかった。 本研究は、国内学術機関が所蔵する突厥碑文の拓本をアーカイブ化することを企図しているが、当初目的としていた所蔵機関を訪問する機会を得ることができなかった。そのため、拓本を撮影ないし修繕する業者に依頼し、事前の検分や見積り、所蔵機関との協議等を経て写真撮影し、データベースを作成する予定であったが、事前の調整をするのみにとどまっている。 ところで、2019年度に実施した4次のモンゴル国渡航(7月、9月、11月、2月)とその際の現地調査については、その報告をまとめて学術論文として刊行することができた。突厥碑文のなかでも著名なトニュクク碑文の数カ所の読み直しと文献学的な整理をおこなった。具体的には従来解釈が曖昧にされてきた碑文テキスト中の数句を、ただの挿入句の繰り返しととらえるのではなく、全テキストから判断して述語部分の省略とみなしてテキストを復元するべきだとの結論を得た。また、同碑文中の定型句/熟語と考えられていた部分に、新たな1語を判読することで、解釈の増補を提案することができた。 また新たにモンゴル国で発見された文物(タリン=ホショーの石製人物像、タヒリン=オンゴンの石槨)についての実見調査をレポートした。アーカイブ化は6世紀中葉から8世紀中葉にかけてモンゴル高原を中心に活躍した突厥可汗国の実態を解明することを目的としているが、当該レポートは各種の文献読解によってそれを補完する作業の一端でもあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
国内の移動制限、学術機関への訪問制限などを受けて、アーカイブ化すべき拓本現物にアプローチする機会を得ることができなかった。特に広島大学(文学研究科)が所蔵するキョル・テギン碑文の良質な拓本は、これまで学術媒体で公開されておらず、申請者としては写真撮影し、リポジトリ等で公開すべき有力な資料とみなしていた。しかし、申請者の居住地・兵庫県や広島県の感染拡大状況に鑑みて、往来は控えるべきものであった。また、東京都の国立国会図書館に所蔵されるビルゲ・カガン碑文の拓本についても、同様の事情により閲覧をすることを控えることとなった。なお、研究計画には海外の学術機関所蔵の拓本を閲覧することも視野に入れていたが、もちろんのこと実施できる状態ではなかった。 従って、国内外の移動をすることなく、文献を収集することで研究整理を図ることとなった。具体的には2019年度に実施した調査に関連する資料をモンゴル国から取り寄せ、それを整理することで突厥可汗国の碑文史料に関連する情報を得た。具体的にはタリン=ホショー石像の研究をまとめたムンフトルガ氏らの共著(R.Monkhtulga, G.Burentogs, B.Ariyajav, Talin Khoshoonii takhirin ongon, Ulaanbaatar, 2019)から、現在、モンゴル国における突厥文字資料に関連する批判点をいくつか見出すことができた。 ともあれ、2020年度に関しては、実際の拓本資料にアクセスできず、今後実施すべき作業の準備期間とせざるを得なかった。研究の進捗状況については「遅れている」と判断する次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も4月から緊急事態宣言が申請者の居住する兵庫県にも発令され、県をまたぐ移動が制限されている。今後、新型コロナウイルスの感染拡大状況が好転されれば、直ちに広島大学に連絡をとり、また、撮影業者とともに拓本の撮影とアーカイブ資料の作成に着手する予定である。海外の研究期間に所蔵されている資料については、渡航先での安全を考えて断念している。一方、今後も数ヶ月にわたり行動制限が継続されるようであれば、研究期間の延長を申請する予定である。 なお、同時に、移動の必要のない作業は継続して実施してゆく。具体的には6世紀から9世紀にいたる古代トルコ系遊牧民に関連する文献ないし史料を読解することである。内外で報告された関連する学術論文類を、碑文史料とともにアーカイブ化する方向にシフトする作業も実施する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は年度初頭より新型コロナウイルスの感染拡大にともない緊急事態宣言の発令に見舞われた。それにより研究活動の制限をせざるを得ず、対外的な研究調査活動をほとんど実施することができなかった。本研究計画について言えば、国内の研究機関に所蔵されている突厥碑文の拓本を実地検分するための旅費を使用することができず、これを次年度使用せざるを得なかった。また、碑文の拓本を写真撮影し、それを画像資料として加工するための費用も次年度使用額にまわさざるを得なかった。
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