2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K01023
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
芹生 尚子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 准教授 (70783702)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高澤 紀恵 法政大学, 文学部, 教授 (80187947)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アンシアン・レジーム / 兵士 / 軍隊の改革 / 七年戦争後の世論 / 脱走 / 啓蒙の時代 / 絶対王政 / 制度と個人 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度において、芹生は、①啓蒙の世紀において軍隊という制度のなかで形作られる兵士の経験や世界観に焦点を当て史料および文献調査を行なうとともに、②研究成果の一端を反映させる論文を執筆した。①2019年8月に実施した現地調査においては、フランス国防省文書館また国立図書館において、兵士の日常を律する王令や個々の部隊レヴェルの規則集(および草案)また兵士の残したエゴ・ドキュメントを渉猟した。ただし、兵士の言葉や文章は希少であり、探索には時間もかかることから、民衆の生活を描写した『タブロー・ド・パリ』の著者として知られるルイ=セバスチャン・メルシエが兵士についても様々な文章を残していることに着目し「史料」として読解を進めた。「記録文学」の分析は当初は計画されていなかったが、本研究にとって極めて示唆に富む方向であることが明らかになった。② 七年戦争後に高まりを見せた脱走兵をめぐる「死刑廃止論」について、感情や世論に関する近年の歴史研究の成果を踏まえながら、論文(『エモーション・スタディーズ』に刊行予定)にまとめることができた。 高澤は、一連の研究報告また研究集会の組織を通じて、現代歴史学を牽引する日本またフランスの歴史家たちと対話を行い、そのなかで、軍事またポリス研究の意義を史学史的な観点から展望する機会を得た。また、当初の計画に沿って2020年3月に日仏の学術交流を主旨とするシンポジウム(於パリ)を開催するための準備を行った。芹生は、前年度に引き続き北米におけるフランス史研究者との交流をはかり、2020年4月にアメリカの研究者ジェニファー・ホイヤー氏(マサチューセッツ大学アマースト)を招聘するべく準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年3月に予定されていた調査と研究集会が、コロナ・ウイルス感染症のリスクのために中止された。また、2020年4月に予定されていたジェニファー・ホイヤー氏の招聘についても準備を進めていたが、同様の理由から実現できなかった。ネットワーク構築に向けた努力は無駄ではなかったと思われる。陸軍卿関連部局文書を所蔵するフランス国防省の文書館で閲覧できる史料は予想以上に膨大であり、その他の文書館で調査を行う時間に欠いた。以上の理由から、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる2020年度は、研究成果のアウトプットと軍隊と統治システムに関してフランスとアメリカの研究者との交流を深めながら研究集会を行うことを予定している。2020年3月と4月に予定されていた研究集会の関係者とともに、研究の成果を反映させるべく学術交流また成果の公表に努める。史料調査を補完的に行いつつ、論文の執筆を行う。
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Causes of Carryover |
2019年3月に予定されていたシンポジウムが中止されたため、2020年の9月以降に時期をずらして使用する。
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Research Products
(5 results)