2018 Fiscal Year Research-status Report
New Historical Documents of Modern America and Atlantic History
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18K01025
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
和田 光弘 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (10220964)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 由美子 三重大学, 人文学部, 教授 (10314105)
久田 由佳子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (40300131)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アトランティック・ヒストリー / 大西洋史 / オネイダ湖運河 / 奴隷制討論禁止規則 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では東海地区における共同研究という機動力を最大限に生かしつつ、地域・時代ともに幅広い個別事例を収集・分析し、そこから得られたさまざまな知見を総動員してアトランティック・ヒストリーの視座の有効性を示してゆくことを目標とする。研究代表者・研究分担者は、それぞれの担当する研究課題を出発点として本研究のテーマにアプローチした。 研究代表者の和田光弘は、個別の適用例としてジョン・モールトン船長関連文書(和田所蔵)の分析を引き続きおこなった。モールトン船長は近代大西洋世界の強固な紐帯を自ら体現した存在であり、分析の成果は、論文「アメリカ建国期における或る私掠船船長に関する新史料についての一考察」(『名古屋大学人文学研究論集』第2号、2019年3月)として公表した。また、本研究の理論的支柱を打ち立てるとともに、アトランティック・ヒストリー(大西洋史)研究の成果を広く社会に還元すべく、大西洋史研究の第一人者である米国ピッツバーグ大学卓越教授マーカス・レディカー教授を招聘して、公開講演会を開催した。和田が司会を務め、大勢の参加者を得て大変盛況であった(「マーカス・レディカー卓越教授特別公開講演」2019年3月)。研究分担者の森脇由美子は、ニューヨーク州マディソン郡サリヴァンの個人宅から発見された未刊行史料のオリジナル(森脇所蔵)を分析の俎上に載せて分析を進めた。その成果は、「ニューヨーク州における市場革命と運河建設」(『論集(三重大学人文学部)』第18号、2019年3月)として公表した。研究分担者の久田由佳子は米国において史資料を収集し、近代大西洋世界の考察に不可欠な奴隷制に関連する論文「1830年代奴隷制討論禁止規則の成立をめぐって」(『愛知県立大学外国語学部紀要』第51号、2019年3月)を発表するとともに、大西洋史関連の著作の書評、さらに口頭発表(計2回)をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究の進捗状況は、きわめて良好であった。研究代表者の和田光弘は、近代大西洋世界の強固な紐帯を体現するジョン・モールトン船長関連文書(和田所蔵)の分析を引き続きおこない、その成果を論文として公表した(「アメリカ建国期における或る私掠船船長に関する新史料についての一考察」『名古屋大学人文学研究論集』第2号、2019年3月)。さらに大西洋史研究の第一人者である米国ピッツバーグ大学卓越教授マーカス・レディカー教授を招聘して、大西洋史に関するさまざまな論点・議論を深めるとともに、公開講演会を開催して、大西洋史研究の成果を広く社会に還元した(「マーカス・レディカー卓越教授特別公開講演(特別ゲスト:ウェンディ・ゴールドマン/カーネギー・メロン大学卓越教授)名古屋大学、2019年3月)。和田が司会を務め、大勢の参加者を得て大変盛況であった。研究分担者の森脇由美子も、エリー運河の支線オネイダ湖運河に関する82点の史料の分析を進め、その成果に一端を論文として公表した(「ニューヨーク州における市場革命と運河建設」『論集(三重大学人文学部)』第18号、2019年3月)。研究分担者の久田由佳子は、米国において史資料を収集し、19世紀大西洋世界に関する主要なテーマである奴隷制について、その分析の基礎的作業を論文にまとめた(「1830年代奴隷制討論禁止規則の成立をめぐって――アメリカ合衆国連邦議会における言論統制(1)」『愛知県立大学外国語学部紀要』第51号、2019年3月)。さらに大西洋史関連の主要な研究(笠井俊和著『船乗りがつなぐ大西洋世界』)の書評を執筆し(『西洋史学論集(九州西洋史学会)』第56号、2019年3月)、市場革命などに関する研究報告をおこなった(第52回アメリカ学会年次大会、2018年6月)。また各自、主要設備として、関連史資料の収集を鋭意おこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
主要設備としては、関連史資料の収集を引き続き鋭意行いたい。この共同作業を通じて、東海地区の主要国公立大学3校のアメリカ史研究者間のネットワークが構築され、関連文献等も重複なく充実させることが可能となる。研究代表者の和田は、大西洋史の諸相や史料の利用に関する諸問題を総合的に考察するとともに、個別の適用例としてジョン・モールトン船長関連文書の分析に引き続き邁進したい。研究分担者の森脇は、ニューヨーク州マディソン郡サリヴァンの個人宅から発見された未刊行史料のオリジナル(森脇所蔵)の分析を引き続きおこなう。大西洋の彼方の市場へのアクセスがいかにして可能となったのか、とりわけ大西洋史の下位分類たる「シス大西洋史」の実践例となろう。研究分担者の久田は、1830年代の奴隷制討論禁止規則に関する考察をさらに深めるとともに、ピーボディエセックス博物館の史料(乗組員の結婚証明書の他に、鯨油の販売先、保険証券等)の調査や、捕鯨業に従事する男性とその妻たちの手紙の分析などを通じて、陸に残された女性たちの生活を明らかにし、マサチューセッツの捕鯨基地の経済的変容、大西洋経済における位置づけなどについて考究する予定である。
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Causes of Carryover |
各自、主要設備として、関連史資料の収集を鋭意おこなったが、その金額が予定より少額であったことや、レディカー教授招聘の費用が、当初の想定よりも少額であったことなどにより、未使用額が生じた。来年度は、関連史資料の収集はもとより、海外での研究調査なども積極的に実施する予定である。
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Research Products
(6 results)