2018 Fiscal Year Research-status Report
イギリス型チャリティのトランスナショナルな伝播に関する研究 1870-1950年
Project/Area Number |
18K01027
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金澤 周作 京都大学, 文学研究科, 教授 (70337757)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | トランスナショナル / チャリティ / セーヴ・ザ・チルドレン / 赤十字 / 戦間期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究で特に重視している二つのトランスナショナルに展開したチャリティ団体の内、セーヴ・ザ・チルドレン基金(SCF)およびその国際版の活動実態を知るために、先行研究を洗い出すとともに、海外での史料調査を行った。 既に主たる研究論文・著作は把握していたが、2018年に出たEve ColpusのFemale Philanthropy in the Interwar World: Between Self and Other (Bloomsbury)は、SCFの創設者(女性)を、同時代の類似の女性活動家たちの中に位置付けつつ、そのトランスナショナルな救援実践を論じていて裨益するところ大であった。また、次に触れるジュネーヴでの史料調査の過程で、未見のフランス語論文(この団体による子どもの写真の活用について論じたもの)を入手することもできた。 夏に実施したジュネーヴでの史料調査では、国際赤十字文書館(ACICR)とジュネーヴ市立文書館を利用し、戦間期に同地で誕生した国際セーヴ・ザ・チルドレン連盟(UISE;1920‐)が発行していた年次報告書(Annuaire)と機関誌(Bulletin de UISE)、ならびにUISEの初期の活動に触れた国際赤十字の機関誌(Revue Internationale de la Croix Rouge)を読むことができた。同時に、ケーススタディとして、関東大震災に対するUISEとICRCの活動実態について、書簡類を調査することもできた。 ロンドンに拠点を置いていたSCFも、機関誌(The Record of the Save the Children Fund)において海外での子どもの窮状をさかんに報じていたことと考え合わせるなら、ヨーロッパを始め世界各地の子どもの窮状に対処しようとする人々の複層的なネットワークが浮かび上がる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
20世紀の福祉国家化の時代にあってもチャリティがなおも活力を保つことができた理由を究明する目的に対して、本年度が予定していた計画はセーヴ・ザ・チルドレンに関する先行研究の洗い出しと史料調査であった。当初はバーミンガム大での調査も考えていたが、一度訪問していたということもあり、今回はジュネーヴでの初調査に注力し、これからの研究にとって非常に実りある成果を得ることができた。以上の理由から、研究はおおむね計画通りに進んでいると判断する。
|
Strategy for Future Research Activity |
30年度の研究を踏まえ、また研究実施計画に従い、31年度は、本研究で注目するもう一つの団体、イギリス発のチャリティ組織化協会の影響を受けたチャリティ組織化運動の、ドイツ、アメリカ合衆国、日本での生成過程を調査する。先行研究の読み込みと並行して、今後実地調査すべき資料の所在を確認する。また、同時に、30年度に収集した史料の整理と分析を進めていく。
|
Causes of Carryover |
年度内に購入する予定であった欧語文献の刊行に遅れが出たため。次年度には刊行されるはずなので、しかるべく執行できる。
|
Research Products
(2 results)