2020 Fiscal Year Research-status Report
イギリス型チャリティのトランスナショナルな伝播に関する研究 1870-1950年
Project/Area Number |
18K01027
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金澤 周作 京都大学, 文学研究科, 教授 (70337757)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | チャリティ / イギリス / 社会福祉 / 比較 / トランスナショナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、コロナ禍の早期収束を見越して、昨年度、想定外の多忙化のために不十分にしか行えなかったチャリティ組織化協会のイギリス以外の諸国への伝播について文献を収集したり、海外調査を行おうとしていたが、とくに後者については物理的に不可能になってしまった。文献収集についても、前半期は洋書輸入に支障があった。 その代わりに、これまで集めた文献や史料を読みなおしながら、いくつか、大きな文脈の中で位置付ける作業を行った。その成果の一つは、The Daiwa Anglo-Japanese Foundation の招聘により3月26日にSeminar Series 2021で行った日英のチャリティ比較に関する報告である。Zoomのウェビナー形式で開催されたこともあり、190人余りの参加登録者を得た。独自の「チャリティ」的な伝統(の乏しさ)に立脚し、明治以降の日本が、イギリスなど欧米のチャリティ実践とどのように遭遇し、それらをどのように理解し、どのように取り入れたり排除したりして「日本」的な社会福祉を構築するに至ったのかを、21世紀の現在までを視野に収めてスケッチした。チャリティのトランスナショナルな伝播の具体的なケーススタディにもなったと思う。多くのフィードバックから判断するに、イギリスのチャリティの特殊性をイギリスの聴衆が認識する契機にもなった。 もう一つの成果は、本研究課題に関わる論点を組み込んで、チャリティに関するイギリス近現代史を通史をして描く新書の執筆である(刊行は次年度)。あくまで一般読者向けの書物であるが、学問的水準を落とさずに書いたものである。また、執筆の過程で、本研究課題のような専門の実証研究だけでは到達できない長いタイム・スパンの俯瞰図を得られたことは、本研究の今後についてもよい影響を及ぼしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍により、学務に相当の負荷がかかり、その上、外国史研究にとってなくてはならない海外調査が不可能になったことが最大の理由である。他方で、Zoomにより遠隔の研究者同士が簡単に交流できる手段が与えられ、対面には及ばないにせよ、新たな刺激を受ける機会も少なくなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究課題の軸のひとつであるセーブ・ザ・チルドレンについては、次年度5月の歴史学研究会大会で報告をする予定であり、それを元にした論文も執筆する。並行して、チャリティ組織化運動についても鋭意、研究をすすめてゆきたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で計画通りに海外での史料調査や国内での学会参加ができなくなったため。次年度は、情勢が許すなら、適正に執行する。
|
Research Products
(3 results)