2021 Fiscal Year Research-status Report
イギリス型チャリティのトランスナショナルな伝播に関する研究 1870-1950年
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18K01027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金澤 周作 京都大学, 文学研究科, 教授 (70337757)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | チャリティ / セーブ・ザ・チルドレン / 国際人道支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、これまでの研究の成果を公表することができた。 まず、『チャリティの帝国――もうひとつのイギリス近現代史』(岩波新書、2021年)の一部において、この研究課題に関連して、19世紀後半から20世紀前半にかけて、イギリス国内の伝統的なチャリティ活動の諸実践が、広大な帝国各地に移植され、根付いていくプロセスを通史的に素描した。また、これと不可分に結びつくいわゆる国際人道支援の潮流が、アイルランド大飢饉救済から、各種戦争の戦災者に対する支援どを経て、セーブ・ザ・チルドレンやオックスファムなどの姿をとって、イギリスを発端に、世界規模の活動へ膨らんでいく脈絡を概観した。それによって、イギリス本国と帝国と世界という三つのチャリティの現場が相互に影響し合い展開してゆく歴史像を提起出来た。また、この現象が持つ光と影の両面をそれなりのバランスを維持して歴史学的に描けた。 新書という形であるがゆえに可能となった、長期的で世界史的な構図を示したことは、個々の事象を実証的に再構成していく際に、なくてはならない道しるべとなるだろうと考えている。その意味で本書の出版は自分の今後の研究推進にとって裨益するところが大きい。 また、今年度は歴史学研究会大会の全体会「戦争・身体・国家」で報告する機会を得て、セーブ・ザ・チルドレンの初期史についてこれまで調査してきた内容のエッセンスを多くの聴衆を前にして披露することができた。日本史の研究者の重厚な報告と並べていただき、すぐれたコメンテーターによって議論を広げていただいて、この研究が持つ意義をあらためて反省することが出来た。そして、註をつけられない体裁ではあったが、文章化して『歴史学研究』に掲載したことも、これからの研究にとって重要な出来事であった。 なお、戦間期から第二次大戦期にかけてのセーブ・ザ・チルドレン関係者の足跡を追う試みも、少しずつ進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定していた海外調査が昨年度にひきつづき今年度もできず、当初予定とはかなり計画が変わってきた。国内で準備できる範囲で研究は続けているが、限界はある。
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Strategy for Future Research Activity |
本来2022年度は最終年度にあたるが、延長を申請して、現地調査を踏まえて研究を仕上げてゆきたい。 また、現地で閲覧しようとおもっていた諸資料を、この際、デジタル化してもらい入手することができないか検討したい。
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Causes of Carryover |
昨年度に引き続き今年度も海外出張ができなかったため、繰越額が大きくなってしまった。次年度には、海外調査に行けない分、資料のデジタルコピーの購入などに充てるとともに、最終年度なので1年延長を申請する予定である。
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Research Products
(4 results)