2020 Fiscal Year Research-status Report
The Reconsideration of Romanization and the Research on the Integration by the Roman Empire
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18K01028
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
南川 高志 京都大学, 文学研究科, 教授 (40174099)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ローマ帝国 / ローマ化 / 帝国統合 / グローバル化 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第3年目にあたる2020年度は、ローマ帝国の「ローマ化」と帝国統合に関する研究に帝国社会の変容の分析を組み込んで検討することを主たる課題にしていた。具体的には、ローマ帝国西半地域に関してローマ化が推進された属州の都市の機能と帝国政府との関係を、帝国東半地域に関してはヘレニズム時代以来繁栄してきた諸都市が皇帝政府とどのように連絡を取り、自らを帝国に適応させようとしていったのかを、「変化」を念頭に置きながら分析することが重要な研究の目標であった。とくに、前者の帝国西半地域については、ドイツとフランスに残る遺跡と考古学資料を観察することが、非常に重要な作業として予定されていた。 しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、外国での調査は一切できず、収集した研究書や論文そしてインターネットによる情報を用いての、机上での研究を行うことしかできなかった。ただし、研究書や論文を検討しながら行った先行研究の批判的吸収とそれに基づいた史資料の分析作業はかなり進展させることができた。そして、その成果を「研究ノート」として所属大学の定期研究報告書『西洋古代史研究』第20号に発表した。この定期研究報告書はインターネット公開されており、同学の研究者より意見を得ることができた。さらに、2021年1月、ローマ帝国の統合の問題を研究テーマに加えている研究者5人に呼びかけて、Zoomを用いたオンライン研究会を実施し、2020年12月に発表した先述の「研究ノート」に関する意見を聴取するとともに、本研究の課題に関する史資料と方法に関する意見交換を行った。この研究会で、非常に有意義な情報や見解を聞くことが出来、次の研究に役立ていることが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「ローマ化」にかかわる問題に関しては、先行研究の立ち入った検討と今後のあり方に関する議論を、この年度でかなり進めることができ、その成果を「研究ノート」として公開することもできた。書物や論文の形で利用できる研究資料、インターネットを通じて入手できる研究情報に関しては、想定よりも多く利用して作業をすることができたと考えている。本研究の後半に力を入れることになっていた国家統合の問題についても、2020年度の大学院科目授業のテキストとして関係研究書であるハーヴァード大学教授E・デンチ博士の書物を用い、その検討を通じて多面的な考察をすることができた。 しかし、「ローマ化」の影響と帝国統合との関係を文学的な史料ではなく考古学的な発掘物や遺構からヨーロッパの現地で確かめる作業は、新型コロナウイルス感染症拡大のために一切できなかった。ローマ帝国辺境地帯にあたるドイツのリメス(境界)遺跡やローマ帝国時代の属州都市の遺跡や出土物が保存されているフランスの都市などを観察する作業ができていないのである。これは、本研究にとって想定外の支障であり、感染症が収まるのを待って早くに実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究の第4年目にあたり、最終年度である。本来であれば、2020年度の成果を踏まえて渡英し、ケンブリッジ大学でローマ史研究者たちと意見交換するとともに、史資料の確認もした上で、研究成果のまとめや発表に進む予定であった。しかし、2020年度の研究は机上での分析・考察にとどまり、外国調査旅行を通じて考古学的な観察や分析を実施することができなかった。そのため、今年度は遅れている外国調査に基づく研究を感染症終息後直ちに実施して、研究を進める予定である。ただ、現段階(20201年4月末)では、ヨーロッパはまだ感染症拡大が収まっておらず、日本でも拡大が続いているので、今年度内に外国調査ができない恐れもある。その場合は、机上での作業やオンラインによる研究会など実施するとともに、本研究の期間延長を申請しなければならないと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究の第1年目と第2年目に関して、外国での調査研究の計画を入れ替えたこと、ならびにこの2年間について部局長の用務のために十分な長さの外国調査期間が得られなかったことにより、第2年目末に残額が生じていた。第3年目の2020年度にそれは解消される予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大のために外国出張できず、その他の研究活動も制限を受け、外国からの資料の入手も遅れを生じたりするなど、計画調書の段階では全く想定していなかった事態となった。2020年度までで使用できなかった研究費は、2021年度の研究で使用する計画であるものの、新型コロナウイルス感染症再拡大が続けば再び外国調査旅費が使用できない。その場合は、本研究の期間を1年間延期して、研究を予定通り完結させ、研究費も有効に使用できるようにする計画である。
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Research Products
(1 results)