2021 Fiscal Year Research-status Report
The Reconsideration of Romanization and the Research on the Integration by the Roman Empire
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18K01028
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
南川 高志 佛教大学, 歴史学部, 教授 (40174099)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ローマ帝国 / ローマ化 / 帝国統合 / グローバル化 / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終年度に当たる2021年度は、前年度のヨーロッパでの遺跡・博物館調査の成果を踏まえて「ローマ化」問題を深く追求すると同時に、3年間の研究期間全体の成果を大まかにとりまとめて渡英し、ケンブリッジ大学で同学研究者と意見交換した上で、成果公表の段階へと進むことを計画していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行が全世界的に収まらず、2020年度に続いて2021年度も外国での作業はできずに終わった。研究は日本国内で得られる資料や情報を用いたものに限られた。そのため、補助事業期間を1年間延長することを申請し、承認された。 2021年度に実施した研究では、「ローマ化」と帝国統合という本研究の二つの主課題のうちの後者で進展があった。とくに、本研究の計画立案や研究実施の最初の段階ではあまり深く考えていなかった帝国統合に関する帝国外勢力の影響を、帝国の東で強勢を誇ったアルシャク朝パルティアとササン朝ペルシアの二大帝国とローマとの関係を考察する中で強く認識することができ、今後の研究の重要な要素として確保した。この成果については、2021年12月刊行の『岩波講座世界歴史3 ローマ帝国と西アジア 前3~7世紀』所収の論文「ローマ帝国と西アジア ―帝国ローマの盛衰と西アジア大国家の躍動―」で論じることができた。さらに、この論文で示した見解について、2022年1月9日にオンラインで開催した本科研費研究のための会合(第3回ローマ帝国史研究会)で2名の研究者から意見を聞き、本年度の研究に活かすこととした。「ローマ化」の問題で重要な論点となるローマ帝政期ギリシア人のアイデンティティについて、著作家プルタルコスについて考察したエッセイも発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「ローマ化」と帝国統合という本研究の二つの主課題のうち、帝国統合の問題は「研究実績の概要」に記したように、帝国外の勢力の影響という新しい論点を得て、想定していた範囲よりも議論の射程を広げることができた。その成果も、ローマ帝国史の概括的な記述の中ではあるが、書籍の形で刊行することができた。 しかし、「ローマ化」の問題については、新型コロナウイルス感染症の流行が終息しなかったため、2020年度に続き2021年度も外国調査ができなくなり、その結果、考古学的な発掘物と遺構をヨーロッパで現地調査することで深く理解し新たな次元へと考察を深めるという作業が進んでいない。感染症が収まるのを待ってできるだけ早くに渡欧し、実地調査をした上で「ローマ化」問題の独自見解のまとめへと進む必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は本研究の最終年度であり、成果の取りまとめ、ならびにイギリスの同学研究者との意見交換を実施すべきところであったが、前年度に続き新型コロナウイルス感染症が終息せず、渡欧調査ができない状態で推移した。日本国内でできる研究領域の作業はできる限り努力して実施したものの、ヨーロッパでの現地調査がなければ進められない分野があり、1年間の補助事業延長を願い出して、承認された。2022年度もヨーロッパでの調査を計画しているが、新型コロナウイルス感染症の流行がまだ収まらない状況に加えて、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まってヨーロッパの情勢が非常に悪くなり、日本から渡欧する航空事情も悪化している。今後、渡欧予定の西ヨーロッパ諸国における新型コロナウイルス感染症の流行状況とウクライナ戦争の状況とを注視し、外国調査が可能になったらすぐにこれを実施できるように準備する。日本で入手可能な研究情報を参考にした帝国統合に関する研究は、引き続き深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度までに生じていた次年度使用額は、2021年度の研究の実施によって、最終年度の予算ともどもすべて費消する計画であったが、新型コロナウイルス感染症の流行が終息せずにヨーロッパにおける実地調査ができなくなったため、目的とした研究を適切に実施するため、1年間の補助事業延長を申し出、承認された。今年度は、これまで実施できなかったヨーロッパでの実地調査を行うことに予算の大方を使用する方針で、補助事業の研究を完了する予定である。
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Research Products
(2 results)