2018 Fiscal Year Research-status Report
南部アフリカ西欧系社会集団の移動史料研究:19世紀前半接触領域の異文化間交流
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18K01037
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
水井 万里子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (90336090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 諭 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (50706934)
和田 郁子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 特任助教 (80600717)
大澤 広晃 南山大学, 外国語学部, 准教授 (90598781)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヨーロッパ系史料 / ケープ / 南部アフリカ / 移動 / 接触領域 / 交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多様な文化の接触領域である南部アフリカに関して西欧系の移動者が作成した多様な文書を「移動史料」と位置づけ、これらの史料分析を行い、現地アフリカにおける「見えにくい人々」を可視化する研究基盤として体系的に整理・比較研究することにある。まず、19世紀前半を主たる対象時期とし、南部アフリカ地域に移動したヨーロッパ系の諸社会集団が生み出した記録、報告書、書簡といった史料群が作成された目的、時代の背景、同時代の価値観の反映の問題にプロソポグラフィの手法から接近し、次に南部アフリカへの人の移動にともなう異文化接触の実相を諸史料の内容の連関性・比較の観点から検討する。研究計画初年度である2018年度は研究計画に沿って以下の研究実績を得た。初年度の研究計画の柱は1海外史料調査、2成果の中間発表としての研究会開催であった。(1)研究代表者水井がイギリスの文書館調査を実施し、イギリス国立公文書館(TNA)において、ケープ植民地関連文書を閲覧、収集した。さらに、英国図書館(BL)においては、セント・ヘレナ商館文書、監督局関連文書を中心に閲覧、収集した。この史料収集の成果は以下の国内研究会で中間報告として発表された。(2)研究代表者、研究分担者、連携研究者、研究協力者、その他の研究者が参加した国内研究会「移動史料研究会」を、2018年11月17日ー18日の二日間に渡り岡山大学津島キャンパスで開催した。当該研究会では、南部アフリカへの長距離航路(東インド航路、西インド航路)を移動したヨーロッパ系、奴隷について記された史料群が検討され、接触領域である現地の人々とどのような交流、混淆があったのかを中心に議論が行われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本事業において、海外史料調査、および国内研究会における成果発表が昨年度の事業計画の中心であった。 (1)在英文書館における史料収集:研究代表者がイギリス・ロンドンの国立公文書館(TNA)、および英国図書館(BL)にて19世紀初頭の史料調査を実施した。前者ではセント・ヘレナ島関連のイギリス東インド会社関連文書を収集、後者ではケープ植民地の裁判記録等を植民地省(CO)の南アフリカ文書群から収集した。 (2)国内研究会(於岡山大学、11月17-18日)を開催:以下の8本の研究報告を得た。 11月17日(土)1.水井万里子「移動史料J研究の趣旨説明、および19世紀初頭の奴隷に関する移動史料研究:セント・へレナ島とケープ植民地」、2.伏見岳志「移動史料:キューバから赤道ギネアに送られる人びとに関して」3.阿部尚史「ムスリム社会における少数派の生存戦略」4.吉田信「オランダ本国と蘭印との渡航経路ー20世紀前半の海路と陸路、ゼー・パス、メッカ巡礼用パスの制度化過程ー」5.宮内洋平「接触領域における自然の生産一一南部アフリカ史からみる社会生態 学的変容の弁証法ーー」 11月18日(日)6.辻本諭「成立期ケープ植民地における陸軍関連史料 1795ー1825年」7.水谷智「間植民地の移動:イギリス帝国史の観点から」8.大澤広晃「19世紀前半南アフリカにおけるウェスリアン・メソディスト宣教団:接触領域での活動と史料」
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Strategy for Future Research Activity |
事業2年目の本年度において、在イギリスの諸文書館、および南アフリカ・ケープの文書館における海外史料調査を、引き続き予定している。 さらに、昨年度本事業で実施した国内研究会の成果をもとに、研究代表者が主編著者となって『東インド航路の移動と史料(仮)』(勉誠出版)と題した論集を出版することが決定している。本年度9月末に原稿を締切り、本事業のすべての研究代表者、研究分担者、連携研究者、研究許力者が論文を寄稿する予定である。共著者には上述の国内研究会に参加した共同研究者、およびこれまでの研究成果を通じて連携が広がった日本史、東洋史、西洋史の研究者が含まれている。 上記のように研究成果を発表し、移動史料研究における課題を明らかにしつつ、最終年度には今後の研究計画を作成し、課題の発展と新たな出版に向けた共同研究基盤を構築する。
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Causes of Carryover |
初年度と第二年度に海外調査を実施予定である。このうち南アフリカのケープにおける文書館調査について、担当の研究分担者大澤に加え、研究代表者水井が第二年度である本年度に担当することになった。共同での調査となったため、当初調査予定であった初年度から本年度に南アフリカの史料調査を変更し、大澤の分担金に本年度旅費目的の繰越金が発生している。また、研究分担者の和田、辻本が初年度の繰越金と本年度の分担金を合算して、研究計画におけるオランダ、イギリスでの史料調査を本年度実施するため、旅費目的の繰越金がそれぞれ発生している。
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Research Products
(9 results)